神経内科通信
2014年12月号 「あなたの腰痛の原因は?」
私は5年ほど前から腰痛持ちになりました。若い時には自分が腰痛に苦しむことになるなんて想像すらしませんでした。腰の痛みは本当につらいですね。ちなみに私の腰痛の原因は筋肉です。無理な姿勢をとると容易に再発します。
この数年、腰痛の治療を希望される患者さんは増えてきているように感じます。腰痛の治療はまずその痛みの原因を調べてから。頭痛と同じく、原因を考えずに痛み止めだけで様子をみることはしませんので気をつけてください。
さて、外来で相談を受ける腰痛で多いものは、筋肉由来の痛み(筋・筋膜性腰痛)、骨由来の痛み(特に腰椎の圧迫骨折、変形性腰椎症など)、腰椎椎間板ヘルニアといったところでしょうか。正確な診断は整形外科の先生にお任せすることになりますが、筋肉由来の痛みは問診と腰を触らせていただくだけである程度診断がつきます。この場合、無理な運動をしていないか、仕事や趣味で同じ姿勢を長い時間とり続けていないか、不自然な腰のひねり方をしていないか、などを問診でたずねます。診察で腰の一部分を押しますと痛みを感じたり、時に筋肉を触ると部分的に筋肉が固くなっていること(硬結と呼びます。)があります。筋肉由来の腰痛症における治療の基本は生活指導とはり薬で、痛いところにはり薬をつけ、普段通りの生活でたいていの場合は改善します。
さて、痛みの治療に苦労するのが、変形性腰椎症、椎間板ヘルニアなどです。この場合、腰の痛みは慢性化しておりまして、安静とはり薬だけではなかなか良くなりません。病気の診断には腰骨のレントゲン写真、あるいはMRI撮影という検査を行いますが、これらにより腰骨や椎間板の変形を確認することができます。(腰痛がないのに、骨に強い変形が起こっているケースもあります。)一度、壊れてしまった骨や椎間板は自然に治ることがなく、むしろ時間の経過にともなって悪化することの方が多いとされます。これが痛みが慢性化する原因なのですね。また、ヘルニアは腰のみでなく足にも症状を残すことがあります。たとえば、長い距離を歩きますと、片側のおしりから腿(もも)の後ろ側に、さらにはふくらはぎの裏側に、ひどくなると足の裏にまでしびれ感(時に痛み)が拡がってしまい、休み休みでないと歩けなくなることがあります。治療も大切なのですが、さらに大事なことは、自分に起こる腰痛の原因をきちんと理解して、痛みを再発させない、あるいは痛みを悪化させないような生活習慣をしっかり身につけることだと私は思います。
時に内科的な病気からくる腰痛もあります。たかが腰痛、と軽く考えずに気になる方は当外来にて気軽にご相談ください。
( 文・神経内科 則行 英樹 )