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神経内科通信

2024年1月号 深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)

  

明けましておめでとうございます

 令和6年、新しい年が幕を開けました。今年もみなさまの健康増進に役立つような診療に努めてまいります。旧年同様、本年もよろしくお願い申し上げます。


深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)

 足のむくみを呈する病気のうち、私たち医者がもっとも警戒し、気をつけるもの、それが深部静脈血栓症です。この病気は足から心臓に血液を流す血管(静脈)に血のかたまり(血栓)が詰まり、その結果、足にむくみが現れるものです。

 いったいこの病気の何がこわいのか。血栓が詰まる場所によってはむくみがひどかったり、痛みが強かったり、さらにひどいケースでは皮ふにかいようを作ることもあるのですが、血栓が血管からはがれて心臓に向かって流れてしまいますと、血流に乗って肺に到達し、そこの血管を詰めてしまい呼吸困難と胸痛を引き起こし、最悪の場合、命を落としてしまうこともあるのです。むくみが片足だけに起こり、時間の経過と共に悪化し、ふくらはぎを握ると痛い。このような症状には特に注意を要します。もし、そういった状況が見られた場合、ただちに医療機関を受診して速やかに診断を受け、病気に詳しい専門医への紹介を受ける必要があります。(多くの場合、循環器科・心臓血管外科になります。)検査としては血管内の血栓を見つける超音波検査、肺の血管が詰まっていないか確認できる胸部CTスキャンなどがあり、いずれも痛みを伴わない検査です。

この病気は決して外来で頻繁に見かけるものではありませんが、私の経験で言いますと、この1年で3名の患者さんに遭遇しています。3名とも足のむくみを気になさって私の外来に相談に来られました。また、うち2名はふくらはぎを握ると痛みもあり、採血では体内に血栓ができた時に起こる反応が全員高値でした。症状出現から早い段階で受診されたこともあり、幸いにもみなさんは無事に回復されています。(後日、紹介先の先生からお返事をいただき、お一人の方の肺に血栓が飛んでいたことがわかり、私は冷汗をかきました。)

この病気の原因についてです。原因がはっきりしないこともありますが、寝たきりの方、家で安静にしている時間の長い方、ある種のホルモン剤を服用されている方、最近手術を受けた方、これまでに深部静脈血栓症を経験したことのある方(再発)、現在がんを治療中の方などに多いようです。治療には血液をサラサラにするするくすり(抗凝固剤)が用いられます。また、むくんだ足を圧迫するストッキングの着用を行うこともあります。この病気は早期発見、早期診断、早期治療が大事です。ぜひ知っておいてください。

 ( 文・神経内科 則行 英樹 ) 

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