本文へ移動

神経内科通信

2024年10月号 冷房病(クーラー病)

注目NEW

    それにしても今年は例年にない、異常な暑さの夏でした。日中、肌を太陽にさらしますと、「暑い」ではなく「痛い」感じがしました。異常気象ですね。

 さて、知人から聞いたところによりますと、今年は熱中症患者さんの救急搬送件数が非常に多かったそうです。中にはお亡くなりになった方もおられ、今後は夏の過ごし方に一考を要しそうですね。いのちを守る生活が求められます。

 外来診療をしていて気づいたことがあります。今年の夏の前半は異常高温が原因と思われる発熱、脱水症、筋肉痛(筋けいれん)などの症状をよく見かけましたが、後半は肩こり、慢性的なだるさ、不眠、食欲不振、痛み・しびれの悪化などの訴えが多く聞かれました。同じ暑さなのになぜ前半と後半で症状の特徴・傾向が違うのか、これは冷房病が原因なのではないかと私は考えています。

 冷房病とは、エアコン(冷房)の効いた場所に長くいることにより身体の体温調節機能に不具合が生じ、体調を崩した状態をいいます。暑い気温を避けるために用いる冷房が、逆に身体に不調を引き起こすなんてなんとも皮肉な話です。

 私たちは刻々と変化する環境の中で生活しており、そのような中でも体内の環境を一定に保つ仕組みが備わっています。特に自律神経系です。自律神経系は暑さ寒さに敏感に反応して、血管を拡げたり、縮ませたりして体温を調節しているのですが、冷房によってこの体温調節システムが乱れることがあり、これが冷房病の病態と考えられています。次に冷房病の代表的な症状を挙げてみます。

手足・おなか・腰などの冷え症状、身体のだるさ、異常な疲労感、肩こり、めまい、関節痛、下痢、腹痛、食欲減退、不眠、生理不順…、これらが冷房病でよくみられまして、すべては血流の低下、自律神経の乱れが発端になっています。

 それではどうすれば冷房病が予防できるのかを考えてみたいと思います。

① 冷房の設定温度を下げ過ぎないこと。外気との温度差は5℃以内が理想とされています。涼しい部屋と暑い廊下を行ったり来たりしますと、冷房病の可能性が増すことがわかっています。極端な気温差は自律神経を乱すのです。


② 冷房の風を直接肌に当てないこと。体表が冷えて血管が縮まり、手足の血行不良を起こすことがあります。また、皮ふが乾燥することで体温を下げるための水分が不足し、暑い環境下で体内に熱がこもってしまう可能性があります。


③ 冷房の効いた部屋では冷たい飲食物を避けること。体表ばかりでなく体内までも冷えればどうなるかはご想像いただけるものと思います。

来年も暑い夏が予想されます。エアコンを適切に使って、安全に生活ができるように今のうちから考えておきたいものです。

  ( 文・神経内科 則行 英樹 )

TOPへ戻る