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神経内科通信

2024年11月号 あご関節は健康ですか?

注目
 あご関節は耳の前方にあり、医学的には顎(がく)関節と呼ばれます。この関節は下あごを動かして、口を開けたり閉じたりする大切な働きを担っています。
 
  顎関節は頭がい骨のくぼみに下あごの出っ張りがはまり込んでいる形態なのですが、この2つの骨の間には関節円板という柔らかい組織がはさまっています。関節円板にはクッションの役目、そして関節の動きをスムーズにするという大切な役目があります。この関節円板がダメージを受けた状態を顎関節症といいますが、その症状は実に多岐にわたります。ざっと挙げても、口を開けた時のあご関節の痛みと異常な音、頭痛、疲れ目、頬の重だるさ、首の痛み、肩こり、耳痛、耳鳴り、耳がつまり感、難聴、めまい、舌痛、味覚異常などがあります。難治性のめまいが、実は顎関節症に由来したケースを私は経験しています。
 
  顎関節症を予防するには、その原因を知ることが必要です。まずは「歯並び」。かみ合わせの異常が顎関節の負担となります。そして「上下の歯が常に接触している状態・歯を食いしばる癖」。ものを噛(か)むとき以外、通常上下の歯は軽く離れているのですが、クセで常に噛んでいる方もいて、顎関節に負担をかけています。次に「歯ぎしり」。歯ぎしりは顎関節のみでなく、歯やあごの筋肉にも影響が及びます。(歯ぎしりには遺伝的な要素があることを私は初めて知りました。)最後に「運動不足・姿勢の不良」。運動には筋肉の緊張をほぐす効果がありますが、それは顔面の筋肉も同様です。また運動はストレス解消にもつながり、間接的ではありますが顎関節を守ることにもつながります。しかし、特に問題と思われるのは「姿勢の不良」です。長時間ずっと同じ姿勢をとる、猫背で過ごす、頬杖をつく、横向き寝・うつ伏せ寝をする、これらは顎関節の負担を高めて顎関節症の発症要因になります。もっとも気をつけたいのがスマートフォンの使用ですね。お若い方のスマートフォンを操作する姿勢を見ますと、たいてい下を向いた状態(うつむき姿勢)で、体勢は前傾になっています。そのような姿勢を長時間とりますと、首から肩にかけての筋肉が緊張し、同時に前かがみになることで下あごが前方に引っ張られます。そのため無意識に上下の歯を噛み合わせてしまい(ゲームでは時に興奮から歯を食いしばってしまうかもしれません)、これも顎関節に相当な負担になるものと思われます。最近の若い方々は食生活の変化から、あごの働きが弱くなっているのではないかと言われます。もしかしたら今後、顎関節症で苦しむ方が増えるんじゃないかと私は心配になります。
 
 他の病気同様、顎関節症も早期発見・治療が大切です。気になる方はお気軽にご相談ください。適切に対応させていただきます。 ( 文・神経内科 則行 英樹 ) 
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