神経内科通信
2024年12月号 口腔ケアの重要性
注目NEW
過去にもこの通信のテーマに取り上げたことのある「口腔ケア」ですが、健康維持に大切なことは何度でもくり返し強調し、説明していきたいと思います。
特に歯の症状がないのにもかかわらず、私は3カ月に1度、定期的に歯科医院に通っています。そこでは歯ぐきの状態を評価していただいて、歯周病を悪化させないようにアドバイスをもらっています。さて、歯科受診のきっかけは2年前のむし歯でした。その治療自体は順調に済んだのですが、診察で歯ぐきの状態が思わしくないことを告げられました。このままだと早晩に歯が抜けやすくなるばかりではなく、口の中の環境が悪化して、さまざまな病気が発生する可能性が出てくる旨の説明を受けました。実はこの指摘は医学的に非常に重要なのです。
日々、歯科の先生方が特に力を入れて取り組む病気には大きく2つあります。歯がむしばまれる「むし歯」と歯を支える部分がむしばまれる「歯周病」です。歯周病は歯の根っこについた汚れの中のバイ菌によって歯ぐきに炎症が起こり、ひどくなれば歯や歯ぐき、歯を支える骨が壊されます。そうなりますと歯が抜けるだけではなく、ばい菌が全身性の病気を引き起こす事態になりかねません。日本歯科医師会のホームページには、「日本人の40歳以上の約8割がこの病気に罹っています。日々の生活習慣がこの病気になる危険性を高めることから、歯周病は生活習慣病のひとつに数えられています」と紹介されていました。
調べてみますと、歯周病の初期は症状に乏しいそうです。しかしながら、あえて初期症状を挙げれば「歯ぐきが腫れる」「歯ぐきの色が赤くなる」「時に口臭がひどくなる」「歯ぐきから血が出やすくなる」となります。さらに進行しますと「歯ぐきに腫れと痛みがある」「口の中のネバつきがひどい」「歯ぐきからウミが出る」「口臭がきつくなる」「歯がグラグラする」「歯ぐきが薄くなる」という明らかな症状が出現し、治療が難しくなります。もちろん、口の中が不衛生となることでバイ菌を気管の中に吸い込んだり、時にはバイ菌が血流に乗って全身にばらまかれることもあるのです。こうなりますと歯周病はもはや全身病です。
幸い私の場合は、時間はかかるものの改善が見込まれるレベルらしく、歯みがきの方法、専用薬用液によるうがい、歯間ブラシによる汚れの除去、といった指導を受け、毎日実行しています。定期受診では歯周病の程度が少しずつ軽減していることが判明し、自覚的には口臭の改善がみられてその効果に驚いています。
歯周病の進行は自覚症状に乏しく、自分ではなかなか気がつきません。40歳を過ぎたら一度は歯の健康診断を受けるべきだな、とこれは私個人の感想です。歯周病が悪化しやすい糖尿病の方は特にご注意を。
( 文・神経内科 則行 英樹 )