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神経内科通信

2008年06月号 「肥満について」

  今回は肥満をテーマにお話しします。成人病予防のためには、何よりもまず肥満を解消することが大切とされています。知り合いの小児科医に聞きますと、我が国では肥満の子供が年々増えていて、現在、肥満児は学童の約10人に1人の割合で見られ、その頻度は20年前に比べると、男子で3倍、女子で2倍になっているそうです。肥満対策は子供たちの問題でもあるわけですね。
 
  肥満の判定には数々の方法がありますが、最近ではBMI(肥満指数)がよく用いられているようです。この肥満指数は、体重㎏÷身長m÷身長mという計算式で数字を出しまして、この数値が25以上を肥満と判定しています。あなたもご自分の肥満指数を計算してみてはいかがでしょうか。
 
  肥満は糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化症などの成人病や胆石症、呼吸異常、腰痛、変形性膝関節症などをもたらします。ある調査では、肥満とともに死亡率が増加しており、例えば米国女性では、先ほどのBMIが27 以上で全死亡率が1.2~1.5倍、心血管死が2~4倍になると言われています。体型も重要。上半身脂肪蓄積型(リンゴ型、腹部肥満)の方が、下半身脂肪蓄積型(洋なし型、ヒップ肥満)にくらべて合併症の発生率が高いことが知られています。
 
  摂取するカロリーが、消費するカロリーより多い場合には当然肥満となりますが、このような食べすぎ・運動不足のほか、体質も肥満の原因と考えられます。(遺伝的因子(生まれつきの体の個性)と環境因子(日頃の生活習慣)) 通常、肥満でない人は脂肪の蓄積量により食欲がうまく調節されています。つまり脂肪を蓄積する細胞である脂肪細胞から食欲をおさえるホルモンが分泌されているのです。近年、肥満者ではこの食欲抑制ホルモンがうまく働かなくなっていると考えられるようになりました。

  最後に肥満治療の原則を述べておきます。
 
  1. 食事のカロリー制限(特に脂肪成分を制限すること。)
  2. 食習慣の改善(まとめ食い、ながら食い、夜食、間食、早食いなどは肥満を来しやすいので注意。)
  3. 運動療法(中程度の運動、例えば壮年者では1分間の脈拍が120程度になるような運動を毎日最低30分続けることが基本。もちろん主治医に相談の上で実施。)
  4. 薬物療法(肥満を来すような病気が見つかった場合に。施設によっては食欲をわざと抑えるくすりを補助的に短期間使用することがあるそうです。)
 
  以前より『肥満は食欲をコントロールしようとしない怠け心から起こる』とよく言われたものですが、これからはすべての方々が肥満についての医学的知識を正しく理解するべき時代になることでしょう。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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