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神経内科通信

2008年11月号 「しびれについて」

  寒い季節になりますと、外来では手や足の「しびれ」を苦にされる患者さんが増えるような気がします。今回は「しびれ」について簡単にお話しましょう。
 
  医者は「しびれ」をカルテには「感覚障害」と書きこみます。「感覚」と一口に言ってもさまざまな種類がありまして、肌をさわった感覚(触覚)、痛みの感覚(痛覚)、熱さ冷たさの感覚(温度覚)などいろいろです。
 
  ここでは大ざっぱな説明をします。感覚障害には大きく二種類ありまして、長く正座した時のような痛みに近い「ジンジン」「ピリピリ」と表現されるタイプのしびれと皮膚に麻酔をかけられた時のような、感覚が鈍るタイプのしびれの二つです。いずれにしてもしっかりと原因を調べることが大切になります。
 
  感覚神経はからだの部位によって、その担当領域が厳密に決められているため、しびれの範囲を確認することによって異常を来している場所をある程度は把握することができます。つまり、しびれの部位を調べることによって、その原因が脳やせき髄にあるのか、手足を走る神経にあるのかが推測できるのです。
 
  脳の病気が原因でしびれる場合には、脳卒中や脳しゅようなど、脳そのものに「キズ」がついてしまった結果であることがほとんどです。せき髄も同様で、 老化やケガによる背骨の変形(頚椎症、腰椎症)や椎間板ヘルニア、せき髄にできたしゅようが原因になります。最近、変形性腰椎症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)症などをカルテでよく目にします。
 
  ほかにも手足の血行不良や栄養障害(特にビタミン不足)などでもしびれは起こります。とにかくその原因はさまざまで、診断に至るまで時間がかかる場合もあるのですね。そうそう、最近増えているのは糖尿病からくるしびれです。主に足の指先から始まる「ジンジン感」には十分注意してください。(時には感覚が鈍くなることもあります。)糖尿病性の感覚障害は早い段階での治療が大切と言われていますから、もしこのような症状があれば一度ご相談ください。
 
  最後に治療の話をいたしましょう。しびれを来たす原因に対する治療が一番大切であることを前提としまして、神経の栄養剤(ビタミン剤)、血行改善を目的に血管拡張剤など用いることがあります。症状が強いときや痛みを伴うときには鎮痛剤、抗けいれん剤、抗うつ剤などが有効な場合もあります。時には症状に応じてさまざまな物理療法も行われます。激しい痛みの場合は、注射を用いた神経ブロックも試みられます。しびれをきたす病気のなかには診断・治療に緊急を要するものもありますので、まずは迷うことなく病院の受診をおすすめしたいと思います。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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