神経内科通信
2009年01月号 「新年明けましておめでとうございます」
平成21年になりました。今年がみなさまにとって、幸多い年になりますことを心よりお祈り申し上げます。外来では引き続きよろしくお願いします。
新型インフルエンザについて
この数年、鳥インフルエンザがマスコミの話題にならない年はありません。特に死亡率が50%を超える(感染した2人に1人は確実に死亡する)とされている「高病原性鳥インフルエンザ」は、平成15年末に東南アジア地域で確認され、その後はロシア、中近東、ヨーロッパ、アフリカにまでその広がりをみせています。
通常のインフルエンザは呼吸器(簡単に言えば、体の中の空気の通り道)のみでウイルスが増殖した結果、発病します。これに対して、鳥インフルエンザウイルスはさまざまな臓器(肝臓・腎臓・腸や血管の壁など)で同時にウイルスが増殖し、急激に全身をむしばんでいくという特徴があります。
90年ほど前に流行した「スペイン風邪」と呼ばれた、世界中で約六千万人が死亡したといわれるウイルスでさえ、その死亡率は2~5%と言われていますから、高病原性鳥インフルエンザの恐ろしさがわかっていただけるものと思います。このウイルスは鳥からヒトへの感染が確認されていますが、幸いなことに、ヒトからヒトへの感染の流行は今のところ確認されてはいません。でも安心ができないのです。このウイルスは常にその性質を変えるために(これを変異(へんい)といいます)病原性を弱める可能性はあるものの、ヒトの体内に入ってヒトからヒトへ感染しやすいタイプのウイルス(新型インフルエンザウイルス)に突然変わることも十分あり得るわけです。そうなると大変です。
日本における鳥インフルエンザの流行は、平成16年1月頃より各地で見られました。山口県と京都府の養鶏場、大分では個人がペットとして飼っていたチャボ、最近では宮崎県の流行が記憶に新しいところです。しかし、それぞれの県の対応が極めて速く、かつ的確であったために、長くても半年もたたずに鳥インフルエンザを完全に制圧しています。このように短期間でウイルスを制圧できたのは日本と韓国だけであり、このことは世界に誇れる業績です。
今のところ、右記のように鳥インフルエンザを制圧することが、流行を予防する最良の方法だと考えられていますので、わが国では鳥インフルエンザワクチンの注射は行いません。新型インフルエンザの最新情報は、テレビニュースや新聞の記事でチェックしておきましょう。
( 文・神経内科 則行 英樹 )