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神経内科通信

2016年08月号 「夏バテについて」

 暑い夏の日が続きます。人一倍暑さに弱く、夏バテしやすい体質の私にとってはまさに試練の毎日です。みなさまはいかがでしょうか。
 さて、この時期よく耳にする「夏バテ」ですが、実をいいますとこれは医学用語ではありません。しかし、夏には外来で患者さんとの会話の中によく出てくる言葉です。今回はこの夏バテについて少々勉強してみたいと思います。
 夏バテとは何か、と問われますと、わかっているようで意外に説明がしにくいのです。もちろん、夏の暑さによって身体がバテる状態をいうのですが、もう少し詳しく説明してみましょうか。私たちの身体は環境の変化、例えば昼夜、気温、運動、食事などに常に適応する仕組みを有していますが、その調節機能の代表選手が自律神経です。この自律神経、暑い季節は特に身体の内部環境(特に体温)を一定に保とうと二十四時間頑張ってくれていますが、神経が疲れてバランスを崩した状態が一般に夏バテと考えられているようです。特に近年の異常気象に伴う高温多湿化、エアコンの普及、そういった日常生活の環境変化も夏バテを助長しているとの報告があります。夏バテは「何となく全身がだるい」「夜ぐっすり眠れない」「食欲がわかない」といった症状に現れます。
 夏バテ予防のためには何が大切でしょうか。これについては多くの専門家がいろいろとアドバイスを行っていますが、一般的な注意事項としては、バランスの良い栄養価の高い食事、規則正しい生活を送りつつ十分な休養・睡眠をとること、水分をとること、が挙げられます。でも私たちはこれらを十分に理解しています。実はこれらの他に重要なポイントが一つあるのです。意外と知られていないのですが、それは「発汗能力を上げること」です。言い換えれば、日常的に体温を上げる習慣を忘れない、ともいえます。夏であっても軽い運動を行うこと、冷たい料理ばかりではなく、時には温かいもので少々汗をかくことが勧められます。これは冷たい食べ物ばかりで弱った胃腸を守ることにもつながるようです。実は涼しさ・冷たさのみも夏バテの原因になるのですね。
 運動については熱中症の危険性が増す炎天下は避けるようにしてください。早朝、あるいは十分に日が傾いてからの軽めのウォーキングがよろしいようです。暑い季節の体温調整は、自律神経が身体に汗をかかせることで調整しています。よって、軽めに汗をかく習慣を持つことで、自律神経が疲弊せずにしなやかに作用することができるのです。もちろん、汗をたくさんかいたら水分調整が必要ですけれども。夏バテ体質の私は「汗をかく習慣」をすっかり忘れておりました。でも、夏の過ごし方は難しいですね。   
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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