神経内科通信
2009年05月号 「高尿酸血症と痛風」
「痛風」という病気をご存知ですか?主に足の親指の付け根や、手の指、ひじ、ひざが赤くはれて、それはもう痛くてたまらない病気です。この病気は血液中にある尿酸が原因になります。
血液中の尿酸が多くなりすぎますと、針状のかたまり(結晶)ができまして、それが身体のあちらこちらにたまっては激しい痛みをひき起こします。これが痛風という病気なのです。高尿酸血症とは、血中の尿酸値は高いけれども症状が出ていない状態をいいますが、痛風発病の前段階と考えられています。また、高尿酸血症は腎臓の働きを低下させ、尿路結石、動脈硬化(血管の老化現象)を進行させるなどの合併症をひき起こします。恐ろしいですね。
尿酸のもとはプリン体という物質です。プリン体は欧米的な食事に多く含まれていまして、日頃から肉類や酒類を好む人は、尿酸値が高くなりやすい傾向にあります。特にプリン体が豊富なのが「あん肝」ですので注意。
食事療法が高尿酸血症の治療の原則です。プリン体を多く含む食品、例えばレバー、エビ、あじの干物、子牛の肉、もつ類、ウナギ、カズノコ、ワカサギ、ニシン、カツオ、タラ、マグロなどの食品をなるべくひかえ、バランスのよい食事をとるように心がけます。またアルコールは尿酸値を上げる作用がありますから、高尿酸血症の方は禁酒、もしくは節酒を行わなければなりません。
それと肥満傾向にある方は、痛風発作を起こしやすいようです。先ほど述べました食事療法とあわせて、適切な運動で肥満を解消することが大切になります。ただし、身体の水分が失われる状態(脱水)では痛風発作が起こりやすくなることが知られており、激しい運動の際には十分な水分が必要です。
ここで痛風の症状についてくわしくまとめておこうと思います。典型的には何の前ぶれもなく突然、足の親ゆびの付け根の関節が赤く腫れて激烈に痛みます。とにかくその痛みはひどく、数日間は全く歩けなくなることもあるほどです。発作的に起こりますので、これを痛風発作と呼びますが、たいてい1週間から10日ほどで次第に治まり、痛みがうそのようになくなります。しかし油断は禁物で、半年から1年ほどたちますとまた同じような発作が起こります。このような発作がひんぱんに起こりますと、関節だけでなくて、腎臓などの内臓が障害されるようになります。実はとても怖い病気なんですね。
さて、痛風にかかるのはなぜかほとんどが男性なんです。患者さん百人中に女性は数名しかいません。最近ではメタボリックシンドロームに高尿酸血症を含めるべきだという意見も出てきています。
( 文・神経内科 則行 英樹 )