神経内科通信
2018年10月号 「腰椎椎間板ヘルニア」
腰の痛みを引き起こす3大原因をご存知でしょうか。一つには腰周囲の筋肉痛、次に腰骨ならびに腰骨の関節に由来する痛み、最後に椎間板からくる痛みです。今回は椎間板をテーマにして少々お話させていただこうかと思います。
まずは椎間板とは何か、というところから始めたいと思います。腰骨に限らず背骨は「だるま落としの積み木」のような骨(この骨は椎体(ついたい)と呼ばれます。)が連なっています。そして固い骨と骨とがこすり合わないようにその間に円板みたいな形のクッションをはさんでいますが、これを椎間板といいます。からだの他の部位と同様に椎間板にも栄養が必要ですが、栄養の取り方が非常に独特で面白いのです。からだの重みがかかっていない時(たとえば横になっている時)に周囲から栄養を吸収し、からだの重みがかかって圧迫されている時(たとえば立っている時)に老廃物を出しています。
椎間板の病気といいますと、何となく年配の方をイメージしてしまいますが、実は違います。ある研究によりますと、驚くことに人間は3歳あたりから椎間板の劣化が始まるそうなのです。実際に椎間板の劣化にともなう病気は若年層から中年層に多く、高齢者は骨そのものの劣化による病気が多いとされます。
さて、椎間板が劣化して潰れてしまいますと、潰れた部分が神経を圧迫したり、潰れた部分に炎症が起こったりして慢性の痛みが生じてきます。この状態を椎間板ヘルニアといいますが、腰に起こりますと次の症状が出現します。
① 前かがみの姿勢を続けると腰の痛みが強くなる。
② いすに座っているのがつらい。
③ お尻、太もも、ふくらはぎにかけての痛みやしびれが強い。
④ 足に力が入りにくく感じることがある。
特に、急激に足に力が入りにくくなった場合や、急におしっこが出にくくなった場合は緊急手術が必要とされておりまして、速やかに病院を受診しなければなりません。もし治療が遅れますと、症状が後遺症として後々まで残ります。
椎間板ヘルニアは骨の劣化からくる病気とは少々違いまして、時間をかければ徐々に回復することも多いといわれます。ですから、専門医にしっかり相談し、生活習慣や薬物治療についてのアドバイスを受けることが大事ですね。
椎間板ヘルニアは腰骨に負担がかかるようなケガや労働、スポーツなどにより起こりやすいとされますが、実は遺伝的要因もあるみたいです。ある整形外科の先生は背骨の変形は遺伝と言い切ってもいいのではないか、とおっしゃっていました。親が腰痛持ちの方、念のため注意を。( 文・神経内科 則行 英樹 )