本文へ移動

神経内科通信

2018年12月号 「健康食品を考える(その2)」

健康食品を考える(その2)
それでは健康食品のいくつかの問題点を整理してみたいと思います。そのことについて書かれた本はたくさんあるのですが、最近私が読んだ中では昭和女子大学の梅垣教授が投稿された学会誌の文章が大変参考になりました。
【問題点①】科学的・医学的根拠のない情報があふれている。
 医者が処方する薬剤は、開発されてからすぐに患者さんの手もとに届くわけではありません。基礎的な研究を経て、何段階かにわたる試験(動物に投与した試験、人体に投与した試験など)を行い、申請後に厳しい審査を経て初めて製剤化が許可されます。実はこの間、非常に長い年月と莫大な費用を要します。また、製剤化後もその効果については調査が続けられます。一方、健康食品はこのような段階を踏みません。梅垣先生によりますと動物実験によって有効性をみたものがほとんどなのだそうです。また、きちんとした試験を経たとしても、その際の原材料と市販されているものの原材料が必ずしも同等のものとは断言できない、とも指摘されています 。「天然素材だから安全・安心」「飲んだ量に関係なく効果あり」などの言葉には注意が必要だということになります。
【問題点②】健康食品と医薬品を混同しているケースが多い。
 結論から言いますと、健康食品は医薬品ではありません。先ほど述べました開発・製造の経緯がその両者では明らかに異なるからです。一般的に健康食品に用いられる原材料には主成分量の取り決め、すなわち成分規格がなく、結局は各製造会社にさじ加減がゆだねられます。また、最終的に原材料に添加物を加えて商品化しますが、この添加物の種類も会社ごとに異なります。このような事情から、健康食品には病気の予防や治療についての表示が認められておりません。ですから例えば、「認知症を予防する」とは書けないので、「脳をいつまでも若々しく保つ」というフレーズが使われるわけですね。
【問題点③】健康食品が原因となった被害の情報が少ない。
 ある調査によりますと、健康食品による健康被害(薬でいうところの副作用)は摂取者の数%だそうです。せいぜい胃腸の調子を崩す程度のもので重大なものはないようです。しかし、経済的被害は案外多く、高額商品を購入し続けることによる金銭的トラブルは日常よく見聞きします。
 梅垣先生は次のように述べておられます。「健康食品の利用が、食習慣や生活習慣の改善につながれば、その製品は利用者にとっては有益である。」「製品の利用が生活習慣を見直すきっかけとなれば、その製品摂取の意義は出てくる。」
健康食品について考えることは有意義ですね。 ( 文・神経内科 則行 英樹 )
TOPへ戻る