本文へ移動

神経内科通信

2021年6月号 免疫力を高める生活習慣

 連日のニュースを見聞きする限り、今のところ新型コロナウイルスの猛威はとどまるところを知りません。特に変異株は感染力が強いとされており、とても心配になります。しかし、悲観してばかりはいられません。コロナ収束後の生活を楽しみにしながら、日々できることをしっかりと行ってまいりましょう。
 免疫。このところよく耳にする言葉になりました。からだを外敵から守るしくみのことを免疫と呼びますが、最近、腸内環境と免疫との関係が注目されています。簡単にいえば、腸の状態と健康との間には密接なつながりがあるということですね。そうなりますと、免疫力を高めるためのひとつの方法として、腸を活性化するような生活習慣について日頃から考えておかねばなりません。
 順天堂大学免疫学講座の三宅教授は、免疫力アップのために必要な生活習慣として、食事・運動・睡眠・リラックスの4つを挙げておられます。まずは食事ですが、これは言わずもがなですね。ごはんを中心とした日本型食生活(和食文化)は腸の健康のためにとても良いことが以前から知られていました。穀物(こくもつ)であるお米(炭水化物)から摂るエネルギーはおかずを伴った栄養バランスが非常にとりやすく、理想的な食事形態なのだそうです。特にごはんのお供によく合う発酵食品(漬け物、みそ、キムチ、かす漬けの魚など)は腸内環境を整える重要な成分です。ごはんを主食とし、主菜、副菜が並ぶ日本食メニューは、太りにくく痩せにくい、理想の食形態だといわれています。
 次に運動。医者を長くやっていると痛感しますが、病気のためベッドの上に長く横にならざるを得ない方は必ずといってよいほど便秘がちになります。運動不足、特に足を使わない生活は足の筋肉だけでなく、腸まで弱らせてしまうように思います。外の新鮮な空気を吸って、適度に日に当たりつつの無理のないウォーキングはお勧めできます。腸の活性化のみならず、ストレス発散にもよさそうですね。睡眠と免疫との関係についてはさまざまな研究がなされてきました。良好な睡眠は体内のホルモンバランスを適正に整え、ストレスに強い環境を作り出すそうです。実際に睡眠不足の人はそうでない人に比べて2倍以上カゼを引きやすいとの報告を聞いたことがあります。最後にリラックスについてですね。リラックスは自律神経の働きと大きく関係します。深呼吸を含め、くつろいでいる環境下においては心臓の運動は抑えられますが、逆に胃腸の動きは活発となり、結果として腸の働きが活性化されるというわけです。
 ワクチン接種や密を避けることは感染対策に必要ですが、腸を元気にする生活習慣も大きな意味を持ちそうですね。    ( 文・神経内科 則行 英樹 )

TOPへ戻る