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神経内科通信

2021年11月号 注意するべき腰痛

 私は腰痛持ちです。日頃の姿勢(からだのクセ)、それから仕事柄、座りっぱなしが多いこともあるのでしょうか、筋肉由来の腰痛が頻繁に現れます。
 私の場合、良い姿勢を意識したり、背伸び(ストレッチ)をしたり、貼り薬で痛みは解決しますので良性の腰痛症だろうと自己診断していますが、「たかが腰痛、されど腰痛」。腰痛の中には時として注意を要するものも含まれます。以前にもお伝えしたかもしれませんが、大事なことは何度でもくり返します。
 転移性のがん 乳がん、肺がん、前立腺がんの3つは高率に骨に転移することが知られています。背骨の腰の部分(腰椎)やその後ろを走る神経の束(せき髄)にがんが転移すれば当然痛みが生じてきます。思い当たる節もなく腰が痛くなり、それが時間の経過と共に悪化するという場合には、すみやかに検査を行う必要がありますので、まずは整形外科への受診をお勧めいたします。
 腹部大動脈の病気 加齢と共に動脈(心臓から流れてくる血液を通す血管)の壁に何らかの変化が生じやすくなります。特に胸やお腹を走る大動脈と呼ばれる太い血管。壁の弱い部分が風船のように膨らんだり(大動脈りゅう)、壁が内側に裂けてきたり(解離(かいり))しますと、非常に激しい痛みを感じます。その場合、いのちに関わる事態も想定されますので、検査・治療は一秒一刻を争います。かつて救急病院に勤務していた頃、脂汗をかくほどの激しい腰痛を訴えて来院した六十代の男性が腹部大動脈りゅうであることが判明し、当初ぎっくり腰を疑っていた私は腰痛という症状の恐ろしさを思い知りました。
尿路結石 腎ぞうの内部に生じた石が、ぼう胱に尿を運ぶ尿管という管に詰まりますと、腰を中心に激痛が走ります。症状は右側か左側かがはっきりしていますが、急に出現する激しい痛みに動脈からくる怖い病気も考えてしまうほどです。尿検査で血尿を確認し、超音波検査を行えば診断が確定することがほとんどです。診断は内科でも可能ですが、治療は泌尿器科にておこないます。
 骨の感染症 感染症を引き起こすばい菌や、結核菌などが血液に乗って背骨に運ばれ、そこで増殖して悪さをすることがありますが(化のう性脊つい炎・結核性脊つい炎)、その場合も腰痛が生じます。放置しますと、時間の経過と共に骨が強く壊されていきますので、発病から早い時期に診断をつけ、適切な治療をおこなわなくてはいけません。この病気は整形外科受診が必要です。
 その他、内臓の病気や婦人科の病気からも腰痛はおこり得ます。腰痛は根本的に体内に何らかの原因があることを知らせるサインです。従いまして、その原因を意識しつつの治療が大切になるのです。 ( 文・神経内科 則行 英樹 )




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