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神経内科通信

2022年9月号 整形外科的に赤信号の腰痛と黄信号の腰痛

少なく見積もっても日本人の5人中4人は腰の痛みを経験しているとされています。かく言う私も筋肉由来、そして尿路結石由来の腰痛を持っています。ご存知のように腰痛は病名ではなく症状名です。すなわち、どこかに原因があって、そのために腰痛という症状が現れるわけです。さて、腰痛の診療に際して私たちが参考にする「腰痛診療ガイドライン」というものがありまして、特に整形外科的に見逃してはいけない腰痛についてくわしく記載されています。

 まずは早急に検査・治療を要する赤信号的な腰痛から。具体的な病名で言いますと、腰の骨、及びその周囲に発生した腫瘍(しゅよう)、細菌の感染、骨折などが挙げられています。注意すべき特徴としては、若年層(二十歳から五十五歳)に発症するケースがある、時間帯やからだの動きに関係しない腰の痛み、胸の痛みを合併している、発熱を伴う、免疫力を落とす薬を内服中、腰痛以外に多彩な症状を呈している、栄養状態が不良、体重が減っている、などが書かれていました。興味深いところでは、特に高齢の方の場合には、転倒、尻もちの経験がなくても腰骨がつぶれること(圧迫骨折)があるので注意を要するそうです。また、スポーツ選手が腰骨の骨折を筋肉痛と勘違いして放置してしまったり、違うケースでは、別の場所のがんが骨に移って(骨転移といいます)腰痛をおこし、腰の痛みから逆にがんが判明したこともあるそうです。

 次に黄色信号の腰痛についてです。代表的な病気には2つありまして、腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症です。これら黄色信号の腰痛の場合には、足に出現する症状がポイントになります。その症状とは痛み、しびれ、(時に)まひの3つです。特に片足だけにみられる痛み、しびれは非常に重要で、これらの診断のきっかけになることがあります。また、歩行時にみられる足の症状も重要で、しばらく歩いていると足がだるくなって休みたくなる、びっこをひいてしまう、という訴えも診断のきっかけとなります。

 話が変わりますが、高齢者にみられる腰痛の原因としては骨粗しょう症(及び腰骨の変形)が非常に有名ですが、最近では年齢を問わず腰周囲の筋肉量の減少が問題視されるようになっています。痛み止めを飲む、シップを貼ることも治療としては大事ですが、腰周囲の筋肉を衰えさせない生活習慣を意識することは多くの方々が知るべきではないかと感じました。これについてはまた別の機会にお話ししたいと思います。先日、腰痛の原因が帯状疱疹(たいじょうほうしん)だった方を診察いたしました。たかが腰痛、されど腰痛ですね。お気になる方は外来にて気軽にご相談ください。 ( 文・神経内科 則行 英樹 )

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