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神経内科通信

2022年10月号 頻尿(ひんにょう)

 年を取ってしまったせいでしょうか、私は最近おしっこがとても近くなりました。もともと血中の尿酸値が高いので、痛風にならないようにとわざと水分を多めにとっていることも影響しているかもしれません。外来でも日中・夜間を問わず、おしっこが近いことを気にされている方が多いように感じます。
 おしっこの回数が朝起きて夜寝るまでに8回以上、夜寝ている間に2回以上あれば尿の回数は多いと判断され、その状態は頻尿と呼ばれます。頻尿はいろいろな原因により起こるのですが、大きく分けてみますと、① 尿の量が多くなっているケース ② 膀胱(ぼうこう:尿をためる袋)に少しの尿しかたまっていないのに、尿に行きたくなってしまうケース ③ 常に膀胱の中に尿が残っているケース ④ 心理的な要因がからむケース、などがあります。
 ①の場合、水分をとり過ぎた時やお酒を飲んだ時などがこれに該当しますが、糖尿病の悪化時や血中ホルモンのバランス異常でも起こるので注意が必要です。
 ②の場合には、一回の尿の量が少なめなのが特徴です。膀胱の炎症(膀胱炎)、膀胱内の石(膀胱結石)など、膀胱に炎症があったり、膀胱が刺激を受けている状況でおこります。また、頻度が高く特に有名な病気がありまして、それは「過活動膀胱」です。脳やせき髄の障害、自律神経のバランス不良、膀胱の血流低下などが原因となって膀胱が過敏な状態となり、結果として頻尿をきたすのですが、突然強い尿意を感じて漏らしそうになることもしばしばあります。この病気は年配の女性に多いとされ、人口の5%から20%が過活動膀胱の状態であるとの報告もあります。
 ③の場合には、排尿後も膀胱の中に一定量の尿が残ってしまいますので、トイレに行ってもすぐにまた尿意を感じてしまいます。代表的な病気は男性に見られる前立腺肥大症です。膀胱の出口にある前立腺がむくんだり、あるいは前立腺の筋肉が異常に縮んだりしますと、尿の出口が狭くなり、結果として尿の出が悪く、膀胱内に一定量の尿が残ることになります。そういえば救急病院に勤務していた頃、夜中にお酒を飲んだ後に尿が出なくなって下腹部が苦しい、という前立腺肥大の患者さんを診察したことがあります。お酒の影響で前立腺がむくんだのですね。さて、②と③は同じ頻尿という症状でも原因がまったく違っており、診断を間違うとかえって症状を悪化させます。よって泌尿器科の先生による正しい診断が必要です。
 最後に④によって起こる頻尿ですが、不安や緊張が主な原因です。この場合、夜間に症状をほとんど来さない、という特徴があります。治療には不安を鎮めるお薬や生活指導などが用いられます。
 ( 文・神経内科 則行 英樹 )
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