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神経内科通信

2010年10月号 「骨粗しょう症」

  わが国は現在、かつて経験をしたことがない高齢社会を迎えつつあります。医療の面からみれば、長寿国になれたことは世界に誇れる輝かしい実績の一つではありますが、反面、さまざまな社会問題や難治性の高齢者病と闘わなければならないことも事実です。今回はアルツハイマー病と並んで高齢者に特有とされる有名な骨粗しょう症についてお話しようと思います。
 
  残念ながら、骨はいつまでも若さを保つことはできません。男性では50歳以降、女性では閉経後に急激に骨が弱ってきます。このように骨に起こる老化現象を骨粗しょう症と呼んでいるわけですが、悲しいかなその傾向は特に女性に強く、これは宿命と考えなくてはいけません。現在、明らかな骨粗しょう症の方は全国で1000万人ほどいるとされますが、そのほとんどが女性なのです。
 
  骨がもろくなることで何が問題になるのでしょうか。それは骨折です。骨粗しょう症の方は足の付け根の部分と背骨を骨折しやすく、いずれも寝たきりの原因となりますのでその予防が大切です。あるデータによりますと、足の付け根部分の骨折に限れば、患者さんの数は平成19年で15万人にのぼり、20年前の3倍となっています。その原因としては、高齢者の人口が増えたことや、生活習慣の変化(例えば、食生活の欧米化や畳(たたみ)の上で生活することが少なくなった)など、さまざま言われておりまして、ある報告では日本人の骨が年ごとに弱っているのではないか、すなわち、今の若者たちが高齢になったときにはさらに骨折が増えるのではないかと推測している学者もいます。これが事実だとすれば実に恐ろしいことですね。若い方々の骨を守らなくては。
 
  年齢を重ねることが骨をもろくする一番の要因ではありますが、時に病気やくすりによって骨粗しょう症が進行することがあります。最近の話題として、糖尿病の方は骨がもろくなりやすいことがわかってきておりますし、副腎皮質ホルモン剤を服用している方も要注意です。また、喫煙習慣、アルコール多飲、両親のいずれかに足の付け根の骨(大たい骨)の骨折がある方はそうでない方に比べて骨折しやすいこともわかっており、日常生活に注意を要します。
 
  最後に骨粗しょう症の検査(骨の診断)について若干触れておきましょうか。一般的には、背骨や大たい骨のレントゲン写真撮影や骨密度測定がよく行われます。双方ともに、特に事前準備などいらない簡単な検査です。性別を問わず、60歳を越えられた方であれば、一度は検査を行い、自分の骨の状態を知っておいたほうがよいのではないでしょうか。もしご不明な点があれば、外来でお気軽にご相談ください。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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