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神経内科通信

2011年05月号 「家庭血圧の測定法」

  高血圧が身体に及ぼす害については、この通信で何度もくり返し述べてきたように思います。グルメブーム後の健康ブーム到来で、この数年、多くの方々がご自分の健康について今まで以上に意識されるようになってきています。
 
  その影響でしょうか、この頃では血圧計を購入されて、自宅で血圧測定をおこなう方が非常に多くなりました。これは大変好ましいことです。なぜなら、平成21年に発表された「高血圧治療ガイドライン」では、自宅にて測定した血圧の数値を重視しているからです。ご存知の方も多いとは思いますが、ご自宅で血圧を測定する際の注意事項をここで簡単に復習しておきましょう。
 
  まずは原則からです。測定に用いる血圧計は「腕に巻くタイプ」が推奨されています。次に(1)座った姿勢で、(2)安静状態を作り(深呼吸を2分程度)、(3)腕に巻いているところが心臓と同じ高さになるようにして、(4)1~2分の間隔で2~3回測定して、数値が安定したところでその平均を記録する、となります。
 
  さて血圧の基準値ですが、高血圧と判断される数値は上の血圧が135以上、下の血圧が85以上とされています。実は「高血圧ガイドライン」では若年層や糖尿病を持たれているケースでは目標とされる血圧の数値がしっかり定められておりまして、その場合にはややキビシイ基準となっています。(たとえば、糖尿病の治療中の方であれば、上の血圧が125以下で下の血圧が75以下です。)
 
  それでは家庭血圧の測定法をガイドラインにそってまとめておきます。測定機器は前述のように、なるべく腕に巻くタイプのものを用い、測定時間の基本を朝と寝る前の2回にします。(多くの専門家は朝の血圧を重視するようです。)
 
  朝の測定は、起きてから1時間以内、排尿後、薬の内服前(朝食前)が原則で、寝る前の血圧測定については特に時間的な制約はありません。この場合には布団に入る前に計ることになります。測定の回数は原則1~3回で複数回が好ましいとされています。これは計るたびに(安静時関が長くなれば)自然に血圧が下がってくることが多いためです。
 
  また、前述のガイドラインでは「24時間自由行動下血圧測定」の有用性も記されています。これはポケットサイズの血圧計を身に着けて、1時間に2回~4回程度、24時間測定するものです。この検査により、夜間高血圧やストレスなどで起こる職場高血圧などを発見することができます。いずれにせよ、診察室ではかる血圧だけで高血圧を評価する時代は終わったといえます。
 
  当外来では血圧手帳を準備しています。多くの方に利用していただき、より厳密な血圧管理を目指していきたいと思います。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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