神経内科通信
2022年12月号 若者の健康が危ない
本当に豊かで便利な世の中になりました。私は昭和四十年代に子ども時代を過ごしましたが、当時の状況を思い起こすにつけ、今の時代を生きる子どもたちはいろいろな面で非常に恵まれているな、と強く感じます。しかし、この世の中が子ども達の体にとって良いことづくしか、と言えば決してそのようなわけではありません。今回は私が危惧する3つの点を挙げてみたいと思います。
① 身体能力の低下(加えて栄養の偏り)
私の子ども時代と比べて、今の子どもたちは屋内で過ごす時間が大幅に増えているように感じます。猛暑やコロナ流行の影響はあるにせよ、公園で走り回る子どもたちの姿が年々減ってきているように思います。整形外科医の知人が教えてくれたのですが、今の子どもたちは転びやすく、ケガをしやすい傾向にあるそうです。以前、この通信にも書きましたが、しゃがみ姿勢の苦手な子どもが増え、姿勢のバランスが悪いうえにとっさにケガを回避する姿勢・体勢が取れないそうで、若い時にこの調子では将来が思いやられます。好きなものしか食べない、という偏食傾向も気になります。本来、日本食は健康食なのに。
② ブルーライトの影響・目と脳は大丈夫なのか
私がパソコンや携帯電話を本格的に利用し始めたのは35歳くらいからなのですが、今の子どもたちは早や幼稚園に通う年齢からすでに使いこなしているようです。先ほど私は携帯電話と書きましたが、今や携帯電話の電話機能はオマケみたいなもので、インターネット、ゲーム、チャットなど長時間使用する方が増えていますね。この機器から発せられる光(ブルーライト)に長時間・長期間あたることによる影響についてはまだ研究途中らしく、若い方々の目や脳に与える影響がとても心配です。後々深刻な影響がなければいいのですが。
③ 難聴の若者が増える?(ヘッドホン難聴が深刻との報告あり)
大きな音を長時間聴き続けますと、耳の奥にある音を感じる細胞が少しずつ壊れます。そして壊れた細胞は二度とは再生しません。ヘッドホンで大音量の音楽を長時間聴いたり、映画館やコンサート会場での大音量に長くさらされ続けますと、聴覚障害の危険性が増すそうです。難聴とは言ってもたいていのケースでは程度が軽く、日常生活には影響しないのですが、年齢を重ねますと老化現象で難聴が進行するわけで、その時に重度の難聴に進行するのではないかと考えられています。先日の新聞の記事では、今や全世界で10億人の若者がヘッドホン難聴ではないかと書かれていました。これは由々しき事態です。
若い方々の健康が気になる今日この頃です。 ( 文・神経内科 則行 英樹 )