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神経内科通信

2023年2月号 コロナ感染症になって感じたこと

  昨年十二月にコロナ感染症にかかってしまい、外来業務に穴を開けたことで患者さん方に多大なるご心配とご迷惑をおかけしてしまいました。心よりお詫び申し上げます。自宅での十日間にわたる自己隔離の期間、いろいろなことを感じ、考えておりました。今回は私が思ったことを書き連ねたいと思います。
 
 まず、コロナウイルスは非常に感染力が強いことを感じました。今、思い起こしてみても、感染の機会は発熱外来であったことは間違いありません。その日は風の強い、とても寒い日でした。発熱の方に寒い屋外に出ていただくのは酷ではないかと思い、その方の自家用車での対応としたのです。運転席の隣に立ち、窓を開けていただいた瞬間、冷たい風に乗って車中のエアコンの暖かい空気が自分の頬に当たるのを感じました。しっかりマスクをしてフェイスシールドをつけても、その隙間からウイルスを吸い込んだのだろうと思います。
 
 私は妻と子ども二人の四人家族ですが、私以外の家族にはコロナウイルスは感染しませんでした。医師である私が一番感染の危険性がある、ということは明らかでしたから、私は家族と一緒にいるときは食事中でもほとんど話をせず、休日も特に用がなければ一人書斎にこもっていました。(もともとテレビを観ないので、家族と同じ空間に長くいることがありませんでした。)そして、エアコンをつけつつも換気は常に行い、私は常に風下にいるようにしていました。加えて家族間でタオルは共用していません。今回の経験から言えることは、たとえ寒くても換気はしっかり行うこと(部屋の中に風の流れを作ること)、家族間の会話は距離を置いて必要最小限にすること、長時間同じ空間に集まらないこと、タオルを共用しないこと、が重要ではないかと思います。
 
 後遺症として咳とタン、全身のだるさが一週間ほど続きました。抗原テストは陰性となっても、時々タンを伴う咳が日中を中心にしつこく出まして、同時に身体のだるさがなかなか取れませんでした。学会の報告によりますと、人によってはさらに長く後遺症状が残るようです。これは精神的に参りますね。
最後に。これは医学的なことではなく、個人的な感想です。流行の初期、コロナ感染を苦痛に感じて自死を選んだ方がいらっしゃいました。もし、その方が今の時期に感染されたのであれば、自ら命を断つことはなさらなかったのだろうな、と。ちょっと前に、感染された方の自宅に落書きや嫌がらせの張り紙や手紙を出し、私たち医療従事者及びその家族をバイ菌扱いし、差別をなさった方々は、今ごろ元気にお過ごしなのかな、とも。コロナ感染症は医師としても人間としても、いろいろと考えさせられます。
( 文・神経内科 則行 英樹 ) 
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