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神経内科通信

2023年3月号 片頭痛の新しい治療薬

 
   作家の芥川龍之介、樋口一葉を苦しめた片頭痛ですが、国際的な調査で、障害生存年数(症状のために健康的な生活が損なわれた年数)が腰痛に次いで第二位と発表されました。もはや片頭痛は当たり前にみられる病気なのですね。
 こめかみを中心にズキンズキンと激しい痛みが襲う片頭痛ですが、最近の研究により、かなり詳しく病気のことがわかってきておりまして、その結果をもとに治療薬が開発されています。これまではこめかみの表面を走る血管の病気とされていましたが、最近では脳の一部に生じた変化が三叉(さんさ)神経(顔や前頭部・側頭部の感覚を司る神経)に波及し、その神経が変調をきたすことによって引き起こされる病気と認識されるようになりました。脳からの刺激により三叉神経からある物質が放出され、それが頭痛の原因であることが突き止められています。その物質をターゲットにする新しい薬(注射とのみ薬の両方があります。)が次第に頭痛外来で用いられるようになりました。
 【注 射】注射薬は片頭痛を引き起こす物質の働きをブロックする作用があります。現在、3種類の注射薬が選択可能ですが、いずれも皮下注射で、月一度(種類によっては3か月に一度)の実施になります。基本的に半年間は毎月外来にて実施、あとは症状に応じて追加の期間を決定します。当外来でも複数の片頭痛患者さんに実施していますが、効果は確実に出ている印象です。さすがに頭痛が完全に治った、という方はおられませんが、「痛みの程度が軽くなった」「のみ薬を服用する回数が減った」「のみ薬の効果が長く続くようになった」「今までとは明らかに違う」という患者さんからの声が聞かれています。その後の発表で、重大な副作用はきわめてまれとの報告があり、非常に安全な注射薬との認識を私は持っています。ただし、たいへん高価なお薬であることが難点であり、注射を希望なさる方には必要となる金額を事前にお教えし、了承を得てからの実施としています。
 【内 服】片頭痛を引き起こす物質を三叉神経から放出させないようにする作用を持ち、頭痛の発作時に服用します。従来からある片頭痛のお薬との併用が可能でありとても便利なのですが、時折めまい、ふらつき、頭の不快感などの副作用がみられ、残念ながら使用を中止するケースがあります。しかし、従来のお薬で効果不十分だった方がこの薬を用いて頭痛の軽減がかない、喜ばれることも多く、片頭痛の治療薬の選択を考えるうえで重要になると考えます。
 注射、内服共に当院外来で実施・処方が可能です。片頭痛の痛みにお悩みの方は当外来にて気軽にお尋ねになってください。
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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