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神経内科通信

2023年5月号 歩くことの利点

 前回の通信では「正しく歩くこと」の重要性について書かせていただきましたが、今回はその続きになります。「正しく歩くこと」により、具体的に体に対してどのような利点があるのかをお伝えしたいと思います。

利点その1:心臓と肺の機能(心肺機能)を向上させる。
 ご存知のように心臓は体のすみずみに血液を届けるポンプの役目を担い、肺は体へ酸素を取り込み、不要となった二酸化炭素を外に出す役目があります。私たち医師は心臓と肺は別々の臓器ではなく、一体のものであると考えています。もし、心臓の機能が悪化すれば、それは肺の機能にも影響し、そのまた逆もしかりです。適度の運動は血液を流す管である動脈の壁を柔軟にして、心臓から送られてくる血液の圧を壁から吸収させます。その結果、上の血圧の数値を下げることがわかっています。ウォーキングはこの適度な運動の代表格ともいえるものです。また、良い姿勢での腹式呼吸は肺に対して好ましい影響を及ぼすことになります。ウォーキングは心肺機能向上に適した運動なのです。

利点その2:睡眠の質を向上させる可能性がある。
 言うまでもなく、睡眠はとても大事です。睡眠は一日の体の疲れを回復させるにとどまりません。睡眠中の体内では各種ホルモンが活躍し、体の傷ついた場所を治したり、学んだり考えたりしたことを脳に刻みつけたり、心身をリラックスさせて気分を安定させたり、自律神経を整えたりします。海外では睡眠の体に及ぼす影響についての研究が盛んに行われておりまして、多くの実験でウォーキングを習慣にすると、寝つきが良くなった、ぐっすりと眠れるようになった、朝の目覚めが爽快になった、との感想が増えたそうです。

利点その3:生活習慣病の改善によい影響を及ぼす。
 先ほど述べました血圧を下げる効果以外にも、歩くことは生活習慣病の改善に大きく役立ちます。糖尿病に関してもです。適切な運動をすることにより、筋肉内に血中の糖が取り込まれることが知られています。ですから、食後の運動は血糖値を改善します。同時に運動によって、血糖降下作用のあるインスリンをすい臓から出させるホルモンが腸から分泌されるようになり、このことも血糖を下げるメカニズムの一つとなっています。また、継続的な有酸素運動は体内の代謝を改善しまずので、肥満の解消にもつながるかと思います。
 今は運動にもってこいの時節です。簡単にできる健康増進法であるウォーキングの意義をご理解いただければ幸いです。ご自分に合った運動法につきましては、主治医とよく相談をなさってください。
 ( 文・神経内科 則行 英樹 )
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