神経内科通信
2023年7月号 気をつけたい薬の副作用(その1)
病院に定期通院なさっている方は、医師より薬の処方を受けていらっしゃることでしょう。薬の処方は私たち医師の大切な仕事の一つですが、その効果ばかりに目を向けていますと、薬による好ましくない作用(副作用)のことを忘れがちになるかもしれません。今回は、外来でよく用いられる薬の知っておくべき副作用をいくつか挙げてみたいと思います。意外に大事な内容かと思います。
① 甘草(かんぞう)と低カリウム血症
当院の患者さんで漢方薬を服用なさっている方は多いと思います。この甘草という成分は、時に血液中のミネラルであるカリウムという成分の濃度を下げてしまうことが知られています。血中のカリウムの濃度が低くなりますと(低カリウム血症)とくに筋肉に影響が出やすく、全身のだるさ、筋肉痛や筋力の低下などが起こります。さらに悪化しますと、じん臓や腸が影響を受けることもあります。小柄な体形の方、高齢者の方は一応気をつけておいたほうが良いものと思います。調べてみて驚いたのですが、医療用漢方薬の7割近くにこの甘草というエキスが含まれているそうです。定期的な採血でカリウム値は検査できます。
② 痛み止めとじん臓の機能障害
この数年、からだの様々な部位の痛みの相談を受ける機会が多くなりました。たとえば頭痛、肩こりから来る背中の痛み、腰痛、膝の痛み、などです。私は内科医ですから、当然ながら薬で対処させていただくわけですが、痛みから解放されたいという患者さんの願いを受けて、日常的によく「痛み止め」を処方します。
ところが医者が気軽に処方してしまう「痛み止め」。時に注意が必要となります。私が調べてみたところ、ある資料には「薬が原因でじん臓の機能を悪化させたケースでは、その約4分の1が痛み止めの服用が原因であった」とありました。薬はからだにとっては毒物と同じですから、解毒化して肝臓やじん臓から体外に排出しています。(だから、たとえ症状がなくても定期的に採血で肝臓の機能とじん臓の機能を合わせて調べることは当たり前なのです。)さらに調べてみますと、すべての痛み止めに気をつけるべき、というわけではなく、頻度的には「ロキソニン」という薬が特に注意のようです。実はこの薬は私も常用しており、痛みを抑える効果の切れ味がよく、とてもよい薬だと思っていますが、もともとじん臓の弱い方や高齢の方には一応注意が必要とされます。じん臓の機能障害は初期にはまったく無症状です。早期に発見して、原因となる薬を中止すれば回復しますので、やはり、定期的な検尿(尿たんぱくの検出)と採血は大切ですね。