神経内科通信
2023年8月号 気をつけたい薬の副作用(その2)
③ 痛み止めと高血圧(あるいは血圧上昇)
頭痛、肩こり、腰痛、膝の痛みなど、慢性の痛みに悩まされている方にとって、痛み止めは間違いなく日常の必需品だと思われます。痛い時だけではなく、毎日服用なさっている方も数多くいらっしゃることでしょう。しかし、痛み止めを服用する際、出現する可能性のある副作用を知っておいたほうがよいと私は考えています。前回はじん臓の機能に与える影響について述べました。実は他にも重要なものがありまして、それは血圧上昇です。すべての鎮痛薬が血圧を上げるわけではなさそうですが、一部の痛み止めは連用により血圧が上昇することが数々の研究で明らかになっています。高血圧がない方でも、痛み止めを毎日服用されている方は、念のため家庭での血圧測定をお勧めしたいと思います。
④ 総合感冒薬と尿閉(おしっこが出にくくなる、または出ない)
コロナが流行する以前は、のどの痛み、鼻水、微熱などの症状がある患者さんに対し、外来ではよく総合感冒薬を処方したものでした。その効き目についてはともかく、処方を受けた患者さんにはなんとなく一種の安心感があったように思います。さて、この総合感冒薬にも気をつけなければならない副作用があります。特に男性特有の病気、前立腺肥大症をお持ちの方には、時にその症状を悪化させてしまうことがあります。おしっこが出にくくなるのです。ひどいケースではまったくおしっこが出なくなってしまいます。特に初めて受診する医療機関では、今までかかった病気についてはしっかりと伝えるようにしてください。また、総合感冒薬は男女共通の病気である緑内障(目ん玉の中の水の圧力が高まって、モノを見る神経を痛めてしまう病気)を悪化させてしまうことがありまして、風邪薬を処方する際、私たちは常にこの病気の存在を気にかけています。
⑤ 貼り薬と光線過敏症(俗にいう「光かぶれ」)
貼り薬(シップ)を使用なさっている方はとても多いですね。使用部位は肩、背中、腰、膝あたりが主でしょうか。さて、時にシップを貼った部位に日の光を浴びますと、皮膚が弱くなくても赤くなったり、かゆくなったり、はれたり、ひどいケースでは水ぶくれができることがあり、これを光線過敏症といいます。特に夏場はシップを貼った部位が露出しないように注意する必要があります。これは有名な話なのですが、「ケトプロフェン」という成分を含んだシップの説明書には、「はがした後も4週間程度は貼っていた部分に日光を当てないように」との注意書きが記されています。このシップは日の光を浴びやすい露出部位の使用には適さないと考えたほうがよさそうです。
( 文・神経内科 則行 英樹 )