神経内科通信
2012年04月号 「脳活性化リハビリテーション」
近年、認知症研究が盛んに行われるようになり、これまでわからなかった脳の機能が少しずつ明らかになってきています。まだまだ研究段階ではありますが、脳を活性化する方法について、最新の情報をお伝えしたいと思います。
群馬大学の山口先生、牧先生が発表された脳活性化リハビリテーションについて書いてみます。脳も筋肉と同様、使わなければ確実に機能が衰えます。脳を常に活性化する方法の原則は、社会性の維持、すなわち人と人との関わりにあるようです。閉じこもり生活の中では脳の活性化は難しいといえそうです。
【原則1】適切なストレスを受けること。ストレス、といえば悪いイメージが強いわけですが、全くストレスがない生活を送れば脳は活性化されません。自分自身に何か課題をもうけたり、あるいは他人から何かお願いされたりという「ストレス」により、頭のスッキリ度や外に向ける注意力が維持されます。
【原則2】ほめられること。ある研究によると、人間の脳はお互いに鏡のように影響しあう特性を持っているそうです。つまり、敵意を持って相対すれば相手も敵意を持つ、悲しみを相手にぶつければ、相手の気分も落ち込む、といった具合にです。当たり前と言えば当たり前ですが。逆に笑顔やほめる言葉を相手に与えたらどうでしょう。特にほめられることは社会的なごほうびであり、脳内のある神経系が活性化され、意欲が向上することがわかっています。ほめた方も相手が喜び自分も嬉しくなって、笑顔が笑顔を生む状況になります。
【原則3】役割りをになうこと。社会的に何らかの役割りをになうことにより、意欲低下の防止につながるようです。社会的に評価され、感謝されることも脳に対してプラスの影響があるということでしょう。地域のボランティア活動やこれまでの経験を活かす社会貢献などが望ましいと思われます。
【原則4】コミュニケーションをとること。これは一方的に相手に話しかけることを意味するものではなく、お互いの会話、つまり両方向へのコミュニケーションをいいます。ここで大切なことは、相手の心情や状況を理解した上での会話を心がけることです。自分の言いたいことのみを一方的に押しつけることは相手にとって不快以外の何物でもありません。マナーを守りつつ互いに会話を楽しむことがコツといえるでしょう。
【原則5】より失敗の少ない学びをすること。いきなり高度な知識や技術を要する趣味を持とうなんて、しょせん無理な話です。新しいことにチャレンジすることは確かに素晴らしいことなのですが、まずは無理のない、自分に合った学びを行うべきでしょう。
( 文・神経内科 則行 英樹 )