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神経内科通信

2014年02月号 「亜鉛(あえん)欠乏症」

  私たちが生命を維持するためには、呼吸によって空気中の酸素を体内に取り込むこと以外にも栄養が必要となります。人間に必要とされる栄養素は約50種類ほどあるとされていますが、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルの5つを五大栄養素と呼んでいます。これらの栄養素が私たちの身体を支え、健康維持のために働いてくれているのです。
 
  今回お話しする亜鉛は五大栄養素のミネラルに属し、体内に微量ながら含まれています。(成人でだいたい2グラム程度)亜鉛は体内で酵素の成分となったり、インスリンの働きに関与したり、味覚、身体の防御機能や生殖機能などを司り、鉄や銅などと共に生体内必須元素と呼ばれています。この亜鉛が足らなくなることで身体に異変や病気が生じることになります。これが亜鉛欠乏症です。亜鉛は体内で作り出すことができませんので食物より摂取します。
 
  亜鉛の役割は非常に多彩ですので、ここでは簡単に説明することにいたします。ホルモンに対する作用としては、例えば血糖値を下げるインスリンの働きに関与します。亜鉛不足はインスリンの分泌を遅らせてしまい。結果として血糖値の上昇を来たします。次に亜鉛は成長・発育に不可欠であり、亜鉛が足らないことにより子どもの発育不良や骨格異常を来たし、さらには老年期に骨粗しょう症を進ませることになります。さて、亜鉛欠乏症で日常の診療上特に問題となるのは、皮膚症状と感覚機能の異常です。亜鉛は皮膚の新陳代謝に作用するため、欠乏症では皮膚が荒れやすく(皮膚炎)、発疹が見られたりキズの治りが悪くなったりします。また脱毛もよく知られた症状の一つです。また、亜鉛は舌の味を感じる部分を形成する成分の一つでもあり、だ液にも含まれています。亜鉛不足によって味覚障害を引き起こし、味のない食事は当然食欲低下につながります。そしていっそう亜鉛不足が進むという悪循環を来たします。他に、におい(嗅覚)にも影響することがあります。
 
  ではどのような食事を摂ればよいのか、ということになります。くすり(サプリメント)によって亜鉛を補充することもできるわけですが、基本は日々のバランスの良い食事ということになります。この場合、自然食品が良くて、レトルト食品、インスタント食品ばかりでは亜鉛は当然不足します。また、食品添加物は亜鉛の吸収を悪くするとされており、気をつけねばなりません。
 
  どの食品に亜鉛が多く含まれているのでしょう。同じ量で比べれば、生ガキ、ココア、抹茶、和牛肉、卵黄と続きます。もちろん、そればかり食べるわけにはいきません。あくまでバランスが大切ですね。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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