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神経内科通信

2024年7月号 かすみ目

  

 ひと昔前まで目の不調、といえば高齢者に特有な症状の一つでした。ところが最近では小学生から高齢者に至るまで、すべての世代において目の不調を訴える人が増えてきているそうです。今回は「かすみ目」をテーマにお話しします。
 
 調べてみますと、世代によってかすみ目の原因は若干異なるようです。若い世代においては「眼精疲労(がんせいひろう:目の疲れ)」と「ドライアイ(乾き目)」が多いとか。これはパソコン・スマートフォンの普及が大きな要因と考えられます。他方、高齢者の世代では「老眼(ピント調節の機能低下)」「白内障(レンズの濁り)」「緑内障(ものを見る神経の障害)」が多いそうで、これらは昔ながらですね。実は私自身も頻繁にかすみ目を自覚しておりまして、その都度対処しています。(どうやら長時間のパソコン作業がその原因のようです。)
 
 なにもパソコンに限らないのですが、近くのものをじっと見続ける、集中して見る、そのような状況下では目の中の筋肉が長時間緊張を強いられることになって疲労状態になります。結果、かすみ目ばかりでなく目の痛み、目の違和感、ひどい時には頭痛を引き起こします。また同時に、集中してものを見ている時にはまばたきが大幅に減ることになり、目の乾燥を来たしてこれがかすみ目の原因になります。対策としては疲れ目予防の目薬を使う、作業する部屋の明るさを適切に保つ、作業の途中で休憩時間を設けるなどが考えられます。話が変わるのですが、聖路加国際病院眼科部長の小沢先生によりますと、毎晩、ゲームをするために長時間画面を見続けた若者の網膜(もうまく:光を感じる目の細胞)のダメージが医学的に証明された症例報告があったそうで、これはこわいですね。
 
 いっぽう高齢者世代のかすみ目ですが、その原因の代表は老眼です。私は五十歳頃から鉄道時刻表の数字がかすみだし、老眼を実感してがっかりしたのを覚えています。こればかりはどうしようもなく、メガネの調整で対応いたしました。
 
 次に白内障。白内障は目の中のレンズが濁ることで発症しますが、この場合にもかすみ目は起こります。症状は明るいところよりも少々暗いところで自覚しやすいようです。点眼薬の処方や手術が行われますが、一般的に治療成績は良好です。さて、かすみ目で一番問題になるのは「緑内障」です。この病気は光の情報を脳に伝える神経に障害が及ぶもので、症状が進めば失明の危険性が生じます。自覚症状としてはかすみ目だけでなく、急激な視力低下、視野が狭くなる、見えているものがゆがむ、などがあり、時に頭痛や肩こりも合併するそうです。これらの症状が認められる場合には、早急に眼科受診をなさるようお願いいたします。たかがかすみ目、されどかすみ目、です。
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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