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神経内科通信

2008年05月号 「脳卒中を予防しましょう」

  数年前に実施された国民生活基礎調査によると、寝たきりの原因となる病気の第1位は脳卒中(27.7%)、第2位は高齢による衰弱(16.1%)、第3位は骨折(11.6%)となっていました。死亡原因でみますと、我が国において脳卒中は、癌に次いで心臓病とほぼ同率2位を占める病気でもあります。私は日頃、脳卒中の発病予防のため、外来で積極的に啓発活動を進めています。今回はちょっと視点を変えまして、東洋医学の立場から脳卒中の予防について考えてみます。
 
  中国では脳卒中を中風病と呼びます。東洋医学では身体と心のバランスをとても重視しており、病気にならない大原則として、「心をおだやかにすること」「伸び伸びとして心地よく愉快でいること」を挙げています。心の乱れが病気の主要原因と見るわけですね。中国に伝わる古書『黄帝内経』には「憤怒は気血を上逆させ、喜び過ぎると気がゆるみ散って制御できない、悲しみすぎると正気が消耗し気虚無力となり、恐れ過ぎると気は下に逃げ、驚きうろたえると気の流れが乱れ、あれこれ考え過ぎると正気は留まって通らない」と記述されています。強すぎる感情の刺激は健康によくないことを教えているのですね。特に中風病患者さんは血圧をコントロールするためにも、過激な情緒変化を避けねばいけません。悲観や失望、ゆううつ、怒りなどは体に悪影響を及ぼし、中風病の再発を招きかねません。さらに予防のポイントを述べていきます。
 
  1. 朝起きたら、ゆっくり動き始めること。特に持病のある人は起床後2時間はウォームアップすること。元気になる時間は午後3時頃と考えてよい。たそがれ時にも注意。
  2. 秋・冬は中風病がおきやすい。十分に衣服を着用して寒を受けないこと。
  3. なるべく禁酒・禁煙して、日常生活を規則正しくすること。
  4. 食事はあっさりしたものを、量は少なめに。脂肪分・脂っこいものはなるべく避け、塩辛いものも少しにして、新鮮な野菜や果物(糖尿病は除く)を多めにとる。アルミ製の炊事用具を使わず、化学調味料も避ける。
  5. 便秘を防ぐこと。夏場は食生活に注意し下痢しないこと。
  6. 血液の濃縮は危険。適度に水分を補給する。高齢の中風患者の神経は敏感性が低下しているので、のどが渇いたと感じた時にはすでに脱水状態。
  7. できるだけ薬の種類を少なくし、肝臓・腎臓の負担を軽減する。原発病(例えば高血圧、高脂血症、糖尿病、心臓病など)を治療すること。定期的に検査をして、経過をチェックする。
 
  前号にも書きましたが、動脈硬化の進行しやすさは遺伝する傾向にあるよう に感じます。ご家族の中に中風病(脳卒中)の方がおられたら、あなたも十分に気をつけていただきたいと思います。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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