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神経内科通信

2008年09月号 「感冒(かんぼう)症候群について」

  今回は感冒症候群(俗にいう「かぜ」)についてお話します。感染症を起こす代表的な原因に細菌とウイルスがありますが、その違いをご存知ですか?実は大きな違いが2つありまして、「大きさ」と「増え方」に特徴があります。大きさについていえば、細菌の方がウイルスよりも何十~何百倍もあります。細菌は自分で増殖できますが、ウイルスは他の生物の細胞の中でしか増殖できません。感冒症候群の原因のほとんどがウイルスであることがわかっています。
 
  ご存知かもしれませんが、感冒症候群の症状を記してみます。なんとなく体がだるい、寒けがする、のどや鼻に乾いた感じがする、このような症状が一日ほど続き、やがて本格的にのどが痛くなり、鼻水が出たり、鼻がつまったりという状態になります。たいていはこのまま治ってしまいますが、時にはせきやたんが出たりするようになります。これは炎症が上気道(鼻やのど)から下気道(気管支)のほうに進んだことによります。また発熱や頭痛、嘔吐や下痢といったおなかの症状が出ることもあります。冬場に問題となるインフルエンザウイルスも当然、感冒症候群の原因になります。この場合には高熱、頭痛や筋肉痛などの全身症状のほかに、肺炎などの重い病気になることがあります。
 
  比較的体力がある方の場合、感冒症候群は特別な治療をしなくても数日で治ることがほとんどです。しかし、体調が悪かったり、気管支に慢性の病気を持っていたり、免疫(病原体をやっつける力)を低下させる薬を飲んでいたりすると症状の悪化を見ることがあります。時にウイルスの感染と細菌の感染を同時に引き起こすことがありますので、症状の程度には注意が必要です。
 
  もう一つ付け加えなくてはいけません。感冒症候群の原因となるウイルスの中には心臓の筋肉を痛めるものもあるのです。その頻度は低いとされていますが、症状が消失して数週間後に動悸や息切れで気づかれることがあります。
 
  それでは治療の話になります。感冒症候群の治療の原則は、安静、保温、栄養の3つといわれています。ウイルスには抗生物質が効きませんから(細菌感染であれば効果があります)、結局は自分の体力が頼みです。とにかく無理をせず、身体を冷やさず、普段通りにきちんと3食をとることが大切と言えるでしょう。ついでに食事に関してですが、感冒症候群にかかってしまった時にはたいてい胃腸の働きがにぶっているものです。したがって、いくら身体のためとはいえ、無理していつもより多めに食べることは難しいのではないかと思います。食事量ではなく食事内容(栄養のバランス)を重視してください。また、水分を十分にとることも大切ですね 。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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