神経内科通信
2007年06月号 「口の中をきれいに保ちましょう」
「誤嚥(ごえん)」という言葉をご存じですか? 口からはいった食べ物や、鼻や口からはいった空気は、のどのところまでは同じところを通るのですが、そこから先は食道(しょくどう)と呼ばれる胃に通じるトンネルと、気管(きかん)と呼ばれる肺に通じるトンネルとに分かれます。
もちろん、食べ物は胃へ、そして空気は肺へ送られなければいけないわけですが、本来は胃の中に落ちていくべきものが、誤って気管にはいってしまう状況を誤嚥というのです。つまり、唾液や水、ご飯などを間違えて気管にいれてしまうことが誤嚥なのです。
通常であれば、少量の水やご飯粒などが気管に入っただけでも激しくむせるために、それらを気管の外にはき出すことができますから問題にはなりません。ところが最近、寝ている間に口の中にたまった唾液を誤嚥してしまって、肺炎を起こすケースが増えていることがわかっています。不思議なことに「むせ」が起こらないんですね。しかも、病気を持たない健康な人でさえ、このような誤嚥を起こすことがあるとされています。通常は体の抵抗力や、気管粘膜の作用で何とか肺炎にならずに済みますが、高齢の方や脳卒中を起こされた方などは容易に肺炎になってしまうようです。(このような肺炎を誤嚥性肺炎といいます。同じ方に何度もくり返して起こることが多く、医者泣かせの病気です。)
そうなりますと、日頃から口の中を清潔にしておくことが誤嚥性肺炎の予防につながるといえそうですね。このことはとても重要だと思われます。
そういえば最近、当外来の診察で患者様の口の中を見てみますと、食べかすが残っていたり、口のにおいが強かったりという方が少なからずおられます。これからは健康作りの基本の一つとして、口の中を常にきれいにされてみてはいかがでしょうか?
積極的に検査を受けてください
病気は医者一人の力で治るものではありません。なんといっても患者様ご本人の努力が大切です。そのためには病気を持たれた方が、その原因や治療の方法、予防の仕方をしっかりと理解していただかなくてはなりません。
もう一つつけ加えますと、日頃から自分のからだの弱点を知っておくことも重要ですね。当外来では検尿、採血、レントゲン検査などを行なっていますが、症状があろうとなかろうと定期的に検査を受けて、ご自分のからだの特徴を知っておいていただきたいものです。
( 文・神経内科 則行 英樹 )