神経内科通信
2009年02月号 「ストレスマネージメント」
最近、生活習慣病という言葉をよく耳にします。生活習慣病とは肥満や狭心症、心筋こうそくなどをいいますが、これらの予防には日常のストレスと上手につき合うこと(ストレスマネージメント)が大切だと考えられるようになっています。例えば肥満に関して。イライラした気持ちを食べることでまぎらわす「気晴らし食い」は肥満の大きな原因となります。また多忙な生活で精神的にも肉体的にも疲れきってしまい、血圧上昇や体調不良、不眠症などを自覚する方々も増えてきています。
ストレスマネージメントを専門に研究している先生の話によれば、何よりも大切なのは、いま自分がストレスのために非常にイヤな思いをしていることに「気づく」ことだそうです。大きなストレスを受けているにもかかわらず、それに気づかないケースでは、知らず知らずのうちに病状が悪化しやすいそうです。次に大切なことは、自分の体が発しているサインに気づくこと。例えば、どの病院を受診しても原因がわからない頭痛・下痢・動悸・不眠などです。
大きなストレスを感じやすい状況として、命令されるばかりの生活環境、自分の能力を超えた(あるいは超えていると思われる)家族や他人からの大きな期待、常に時間に追われる生活、何事もキチンとやり遂げなければならないという責任感などが挙げられます。まずはそのような環境・状況に自分自身がいるのかどうかに気づき、その中にあって体がどのように反応しているかをしっかり理解することからストレスマネージメントは始まります。
ストレス解決法についてですが、考え方としてはまず「ストレスを解決しやすい環境・状況をあらかじめ作っておく」ことが大切です。ご存知のようにストレスはもともと簡単に解決するものではありません。ヒントとして専門家は3つのアドバイスをしてくれています。(1)周囲(家族や社会)との良好な関係作り、(2)頭を冷やす(ひと呼吸おく)、(3)適当な(のめり込み過ぎない)趣味を持つ、以上です。特に(1)については周囲からの気づかいを待つばかりではなく、余裕があれば家族、友人、地域、職場などへ積極的に声をかけたり、奉仕活動を行ったり、といった働きかけが重要であると言われていました。実行するにはムズカシイ面もありますが、何もせずにストレスに苦しんでいるよりは確かに有効な方法かもしれませんね。
ストレスを薬の力で解消してしまおうと思い違いをされていませんか?ストレスの治療は右記のヒントを参考にして環境を変えるか、自分を変えるか、その両方のいずれかということになりますね。
( 文・神経内科 則行 英樹 )