神経内科通信
2009年04月号 「パーキンソン病」
神経内科の領域で「手のふるえ」の原因としてよく見かけるのがパーキンソン病です。この病気は脳の中にある「ドーパミン」という物質が減ってしまい、その結果、脳が出す運動の指令がうまく手足の筋肉に伝わらず、スムーズに動けなくなってしまうのです。そうなりますと手が使いにくくなったり、歩きにくくなったりして日常生活に大きな支障を来たします。
パーキンソン病は40歳以後、特に50~60歳代に症状が出はじめまして、典型的なケースでは手足のふるえをはじめ、筋肉のこわばり、動きのにぶさ、転びやすさなどの症状がみられます。これらの症状は上手に治療薬を選択することにより、比較的簡単に改善させることができます。しかし、残念ながら完治する病気ではありません。症状は年齢とともに進行するのが普通です。
わが国の患者数は人口10万人につき80~100人くらいとされ、決して珍しい病気ではありません。発病するのは50~60歳代が多いのですが、20歳代~80歳近くまで、実に幅広い年齢で発病します。ちなみに男女差はありません。ここで、もう少しくわしく症状をお話することにいたしましょう。
- 手足のふるえ 安静にしている時に自然にふるえるのが特徴で、ふるえに注意したり、動作をおこすと止まります。必ず片方の手足から始まって反対側に広がります。
- 筋肉のこわばり筋肉が硬くなるため、患者さんの関節を伸ばそうとすると、カクンカクンという筋肉の抵抗を感じます。
- 動きがにぶい何かをやろうとしても、動き出すまでに時間がかかり、動作全体も遅くなります。また、表情が乏しくなりまばたきが少なくなります。時に歩きだそうとするとき、はじめの第一歩がなかなか踏み出せません(すくみ足)。
- その他の症状 姿勢を一定に保つことが難しい、便秘、立ちくらみを起こしやすくなる、トイレが近くなる、気分が沈みがちになる、といった症状も見られます。
パーキンソン病は厚生労働省の「特定疾患」に指定されていまして、申請すれば治療費の補助が受けられます。
また、パーキンソン病によく似た症状をきたす、パーキンソン症候群というものがあります。代表的には脳卒中の後遺症、内服薬の副作用からくるものが多く、精密検査をおこなって確実に診断をつけなくてはいけません。手足のふるえが気になる方は外来でご相談ください。
( 文・神経内科 則行 英樹 )