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神経内科通信

2009年11月号 「こどもが危ない!」

  先日、何気なく読んでいた日本医師会雑誌に、気持ちが落ち込んでしまうような衝撃的な記事がありました。整形外科学会は、お年寄りの方が腰やひざを悪くし、さらに筋肉の力が衰えてしまった結果、転びやすくなる状態を運動器不安定症と称していますが、最近では小学校・中学校に通う子供たちの中に足腰が弱く、筋肉の柔軟性が乏しく転びやすい運動器機能不全を持つ子が増えているというのです。
 
  日本医師会健康スポーツ医学委員会副会長をされている立入先生の発表によりますと、最近の傾向として学校検診で年々からだの硬い子供が増えているそうです。具体的には、腕が完全に上がらない(つまり肩関節の動きが悪い)、まっすぐ立った状態からからだを前方に倒した時に指先を床につけることができない、同じく立った状態からしゃがみこんだ時に後ろに転がってしまう、といった報告がなされていました。驚くべきことにこれらの状態が(健康とされている)小学生の100人中6人に、そして中学生の10人中1人に観察されるということでした。今や「足腰が弱い」「転びやすい」というのはお年寄り特有の現象ではないということになります。本当に嘆かわしいことです。
 
  文部科学省は子供たちが体力低下を起こす原因として次のような要因を挙げています。(1)外遊びやスポーツの重要性の軽視といった国民意識の問題、(2)都市化・生活の利便化などの生活環境の変化、(3)睡眠や食生活などの子供の生活習慣の乱れ、これらが複雑に相まって子供がからだを上手に動かす機会が減っているのではないかとのことでした。
 
  立入先生はこのような子供を増やさないために次のような提言をなさっています。(1)幼児の頃から外遊びを増やす、(2)幼児期より多くの種類のスポーツを体験させる、(3)子供がからだを動かすことの楽しさを自分で見つけ、進んでからだを動かすようにする、(4)子供がからだを動かす場や機会や時間を家庭・学校・地域などでなるべく多く確保する、(5)子供が発達段階に応じて多様な指導を受けることができるようにする、(6)子供一人ひとりの能力・適性を伸ばしていく視点に立って指導を行う、以上です。
 
  子供は社会・国の宝と言われますが、その子供たちが精神的にも肉体的にも蝕(むしば)まれてしまう社会には絶対にしたくないですし、してはいけませんよね。これは私たち大人の責任ということになるのでしょうか。とにかくまあ、いろいろと考えさえられた次第です。子供たちよ、健康で長生きせよ、と思わず叫びたくなるような記事でした。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
 
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