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神経内科通信

2018年11月号 「健康食品を考える(その1)」

ずいぶんと前の出来事です。休暇で実家に帰っていた時、健康食品の訪問販売員の方が訪ねてきました。「ご主人、今日は素晴らしい食品の紹介です。」「この食品を毎日摂取すれば、水虫、糖尿病、果てはガンまで予防し、治すことができるのです。」とのことでした。「それは素晴らしい食品ですね。きっと有効成分に優れているのでしょう。どうでしょう、私は大分医科大学に所属する医者です。御社と私で共同研究を行ってノーベル賞を目指しませんか。」と返しますと、訪問販売員は苦笑いで言葉を濁しつつ、そそくさと帰っていきました。  健康食品を医薬品とを同じように思われている方はいらっしゃいませんか?実は健康食品と医薬品は違う性質のものです。医薬品は医者と薬剤師によって有効性と安全性が常に監視され、その利用環境が守られていますが、健康食品は私たち消費者の自己判断、自己責任で利用されているという違いがあります。  というわけで、今回と次回の外来通信では健康食品について考えてみたいと思います。まずは健康食品とは何か、というところから始めましょう。近年、サプリメントで有名になった健康食品ですが、これは広い意味において使われている名称であり、次の2つに分類することができます。一つは食品表示法という法律に基づいて定められた「保健機能食品」、そしてもう一つはそれ以外の食品(これらをせまい意味での健康食品と称しています)。この2種類です。  保健機能食品には次の種類があります。①特定保健用食品(「トクホ」という名称が有名ですね。)、②栄養機能食品、③機能性表示食品、の3つです。 ①特定保健用食品 ・・・これは国の組織が安全性と有効性とを審査して、その機能表示(保健目的)が許可さ  れた食品です。病気を発病する危険性を軽減する表示がなされます。「骨粗しょう症を予防するカルシウム食品」「生まれてくる赤ちゃんの神経障害を予防する葉酸(ようさん)」などです。 ②栄養機能食品 ・・・これは私たちが生きていくうえで必要な栄養成分を補給する目的で作られた食品をいいます。ビタミンやミネラルなどがあります。この食品は製造者の自己認定で機能表示をしますので、必ずしも国や研究機関によって有効性や安全性が評価されたものばかりとは限りません。 ③機能性表示食品 ・・・製造者の責任のもと、特定保健用食品と同じような表示ができるものです。その内容については消費者庁が把握し、世間一般に公開されています。この食品は「現在病気を治療している患者さん、未成年の方々、妊婦さんを対象にしないこと」、「病気予防についての表記ができないこと」などいくつかの制約があります。( 文・神経内科 則行 英樹 )
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