神経内科通信
2019年10月号 「腰にやさしい座り方」
慢性の腰痛持ちである私は、身体を動かすたびに「あいたた、どっこいしょ」が口癖になってしまいました。上半身をひねったまま不意に力を入れたり、階段を降りる際にあと一段あるものと考えて床を踏みつけたときに必ず腰痛が悪化します。腰痛症は高齢になるほど出現しやすいのですが、実は働き盛りの世代にも発症します。タクシー運転手さん、一日中机の前に座ってコンピュータを扱う事務職の方など、座っている時間の長い方に特にこの傾向があるようです。
いろいろ調べてみますと、立っている姿勢と座っている姿勢とでは、だいぶ腰への負担度が違うようです。腰を曲げている状態(前傾姿勢)で腰は非常にストレスを受けます。杏林大学リハビリテーション科の岡島教授によりますと、前かがみの姿勢で10キロの荷物を持ちますと、腰の椎間板にはだいたい40キロちかくの負担がかかってしまうそうです。痛みやすい腰は、人間のからだの中で最もデリケートな部分であり、また弱点の一つといえるのかもしれません。
岡島教授によりますと、腰を支えるのは骨ばかりではなく、おなかと背中の筋肉も共同で骨の負担を軽くしているとのことでした。私たちは経験的に、悪い姿勢をとれば腰の筋肉痛が引き起こされることを知っています。そのようなわけで、座りっぱなしの姿勢を長い時間とりますと、腰の骨を守るために背中から腰にかけての筋肉に相当な負担がかかることがわかります。年齢を重ねて、おなかと筋肉と背中の筋肉(腹筋と背筋)が弱ればなおさらのことです。
それでも生活上、座る習慣をやめるわけはいきません。腰にやさしい座り方のコツを以下に挙げてみます。
ぜひ参考になさってください。
① どんな種類のイスでも深く座ること。浅く腰かけた場合、おしりが手前に落ちてしまいやすくケガの原因になりますが、それ以外にも上半身の姿勢が不安定になりやすく、特に背中と腰の筋肉の負担となります。
② 背もたれのあるイスを選ぶこと。背もたれのあるイスであれば、深く腰かけた際にイス本体に上半身の体重を支えてもらうことになり、筋肉の負担が減ります。腰のへこみが当たるところが少々飛び出している背もたれや、腰を包み込む形態のイスであればなお良いです。これをランバーサポートといいます。
③ イスのクッションは硬すぎず柔らかすぎず、適当な硬さのものを選ぶ。
④ 座っている時には足を組まないこと。足を組んだ姿勢は左右の筋肉バランスを崩し、左右どちらかの背骨に負担がかかってしまいます。
⑤ いずれにせよ、長時間の座り姿勢は骨にも筋肉にも負担が大きいので、30分から1時間で一度立ち上がることが大切で。 ( 文・神経内科 則行 英樹 )