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神経内科通信

2020年2月号 家庭血圧測定の意義

 この数年、ご自宅で血圧測定をなさる方が非常に増えてまいりました。これは血圧に由来する数々の病気を予防するうえで大変好ましいことです。今回は家庭血圧測定の意義を日本高血圧学会が発表した指針に基づいてお話いたします。
なぜ、家庭血圧が大切なのか。それにはいくつかの理由があります。
① 外来(病院)での血圧測定よりも得られる情報が多いこと。
病院内で測る血圧測定のみでは見落とす異常があります。たとえば白衣高血圧。これは病院に来るとなぜか血圧が高くなってしまうもの。他には仮面高血圧。これは病院で測定する血圧は正常なのに、家に帰ると高血圧の状態になってしまうものです。こういった血圧変動は家庭血圧測定により簡単に発見できます。また、普段の生活の中での血圧変動や季節による影響、食べ物による影響などがはっきり出ますので、薬の処方内容を考えるうえで非常に参考になります。
② 患者さん自身の治療意欲に結びつきやすいこと。
①  の内容にも関連しますが、血圧の数値が自宅で簡単に把握できますので、
患者さんが治療効果を実感しやすくなります。生活習慣のここに気をつければ血圧が安定しやすい、この薬をきちんと服用していれば血圧の数値がよい、ということが手に取るようにわかるわけです。これは患者さんが生活習慣を自ら反省なさったり、薬を続けることの重要性を認識なさることにもつながります。
➂ 家庭血圧の数値(変動)で病気発生の予測がつきやすいこと。
 常に血圧が高めの方は別としまして、家庭血圧ではたとえ1日1回の血圧測定であっても、日による数値の変動がとらえやすくなります。実は血圧の数値変動が大きければ大きいほど、脳卒中や心筋こうそくなどの血管病になる可能性が高まることがわかっています。これは1~2か月に1回程度の、病院での血圧測定ではとてもわからないことです。ですから、患者さんが持参なさる血圧手帳から私たち医師が得る情報は、とても重要なのです。つけ足しますと、血圧と同時に測定する脈拍も重視します。血圧の数値と同時に記録をお願いします。
➃ 高い医療経済効果が得られること。
 病院での血圧と家庭での血圧を比較しますと、前述した白衣高血圧や仮面高血圧などがはっきりし、的確な治療を行うことができます。また、患者さんの治療意欲の高まりから、薬の減量が実現するケースも数多くあります。ある調査によりますと、家庭血圧測定を高血圧診療に積極的に組み込むことによりまして、年間約1兆円の医療費削減に結びついているとの報告がなされていました。次回は家庭血圧の測定方法を復習したいと思います。 ( 文・神経内科 則行英樹 )
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