神経内科通信
2020年3月号 家庭血圧測定の原則
前号では家庭血圧を測定する意義について述べました。今回は自宅で血圧を測定する際の原則について、日本高血圧学会が発表した指針に基づいて説明してまいります。すでにご存じの方は、再確認としてお読みになってください。
まず測定機器についてです。現在、日本全国で約3500万世帯に自動血圧測定器が置かれているといわれていますが、市販されている機器には、指で測るもの、手首で測るもの、上腕(肘より上側)で測るもの、の3種類があります。前述の指針によりますと、この中で一番数値のばらつきの少ないものは上腕で計測するタイプであるそうで、このタイプの使用が推奨されています。一般的には利き手ではない側での血圧測定が原則となります。ただし、右と左の数値の差が大きい場合には、常に高い数値が出る側の測定が勧められています。
次に家庭血圧測定の条件です。ここはとても大事なポイントになります。測定は理想的には朝と晩の2回、最低でも朝のみの測定となりますが、朝の測定にあたっては次の条件を満たさなくてはなりません。① 起床後1時間以内、② 排尿後、➂ 朝食前・朝のくすりの服用前、➃ イスに座った状態、⑤ 測定スイッチを押す前に1~2分(海外の指針では3~5分)の深呼吸、以上です。特に⑤を省略されている方が多いので注意してください。また、晩の血圧測定は、① 寝る直前、② 測定スイッチを押す前に1~2分の深呼吸、となります。なお、晩の血圧測定は生活習慣や病気の種類などによって、夕食前、入浴前、飲酒前、夕方のくすりの服用前、といった条件が必要となることがあります。ご不明な点は主治医と相談をなさってください。朝晩とも1~3回の測定になります。
家庭血圧測定の頻度についての質問を受けることがあります。実はこのことについて、指針以外にいくつかの専門書を読んでみましたが、「こうしなさい」という基準はありませんでした。つまりは、高血圧の重症度、他の病気の有無、血圧のくすりの種類や用い方、などによって柔軟に考えなければいけないようです。基本的には毎日の測定が好ましいわけですが、血圧が十分に安定していることがわかれば、例えば1日おき(週3~4日)でも構わないと思われます。
外来を受診なさる高血圧の方のほとんどは血圧手帳・血圧記録ノートを持参されます。ほとんどの方がきちんと記録されており、治療の参考になるのですが、時々、測定時間の記録と脈拍の数値が抜けているケースを見受けます。これらは意外に大切であり、ぜひとも血圧の数値と併せて記録をお願いいたします。
家庭血圧計は機械であり、長期間の使用で精度が落ちることがあります。指針では年1回のメンテナンスを推奨していました。 ( 文・神経内科 則行 英樹 )