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神経内科通信

2021年10月号 オーラルフレイル

 
 先日、日本医師会の定期刊行物の中に面白い記事を見つけましたのでご紹介いたします。健(すこ)やかに老いることが大切だ、とよく言われますが、そのためのヒントになるものと考えます。それは「オーラルフレイル」です。
オーラルとは「口」を、フレイルとは「弱さ、虚弱」を意味します。オーラルフレイルとはすなわち、口が持つ機能の低下を意味するのです。口が持つ能力とは、1つには飲んだり、かんだりという機能(そしゃくやえんげ)があり、もう1つには会話や歌など、言葉をなす機能(発声)があります。口やあご、舌の筋肉が衰え、歯が抜けて数を減らしてしまい嚙む力や飲み込む力が落ちてしまったり、人との会話が減って口を動かさなくなり、言葉が聞き取りにくくなったりしますと、身体の機能としてのみならず、家庭生活や社会生活に大きな影響を及ぼします。オーラルフレイルとは、口の健康への意識が低下してしまったがためにおこる身体機能低下・社会的不利益であるといえます。
フレイルとは機能の低下を示しますが、幸いなことに機能障害には至っていません。すなわち、早い段階で気がつき、適切に対応することで機能障害を予防することができるのです。以下にオーラルフレイルのチェック項目を挙げてみます。あなたは1年前と比べて現在の状況はどうなっていますでしょうか。
① 食事の種類は変わっていないのにも関わらず、噛めない食べ物が増えた。
② 出される食事の量が変化したわけでもないのに、1回の食事量が減った。
③ 特に食事内容を含めた生活習慣が変わってはいないのに体重が減った。
④ これまではよく外出をしていたが、外出の機会が大きく減った。
⑤ これまでは人との会話を楽しめていたが、人と会うのが面倒になった。
いかがでしょうか。以上のような日常の小さな変化に気がつくことが、オーラルフレイルの早期発見につながるのですね。
 これまで述べましたように、「食べる」「話す」という人として基本的な行為を楽しむためには、何よりもまず口の中の環境が整っていることが重要です。歯周病やむし歯などの病気がないか、定期的に歯科を受診して診てもらうのがよいでしょう。そして口のコンディションだけでなく、日頃から栄養のバランスを意識した食生活を行うこと、腹筋を上手に使って深呼吸(腹式呼吸)を練習すること、これらも非常に大切です。
 東京医科歯科大学の戸原教授によりますと、口の周りの筋肉を鍛えるには歌を歌うのが良いそうです。なるべく高い声を出し、テンポの早い曲がより効果的とのことでした。これは選曲に悩みますね。 ( 文・神経内科 則行 英樹 )
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