神経内科通信
2011年07月号 「むずむず脚(あし)症候群」
今回のテーマは「むずむず脚症候群」です。実に変テコな名前ですが、最近いろいろと話題になっている病気ですので、くわしく解説させていただきます。
この病気は夕方以降、特に寝る前になりますと足がムズムズしてきて、動かさずにはいられなくなるという特徴があります。ムズムズという表現は患者さんによって異なっていて、ジンジン、ピリピリ、ポッポッ、ピクピク、ジリジリといった訴えの場合もあり、時にはかゆみとして感じられるようです。この症状のために寝つきが悪くなってしまい、夜中に目を覚ましてしまったり、眠り自体が浅くなったりして(つまり、リラックスしてぐっすり眠ることができなくなり)、時に日中の強い眠気に悩まれる方もいらっしゃいます。(単なる不眠症と勘違いされることもあります。)最近の研究では、100人中2~5人はむずむず脚症候群ではないかとされ、決してまれな珍しい病気ではありません。女性にやや多く、40歳以降の中高年に多くみられます。
発病の原因は完全には解明されていませんが、運動機能を潤滑にする脳内物質(ドパミン)、及びその物質の合成を助ける「鉄」が不足することで起こるのではないかと考えられています。実際に鉄分が欠乏しているタイプの貧血を持たれている方や妊婦さんにもこの病気が見られやすいことが知られています。
この病気には4つの診断基準がありまので、次に記します。
- 脚に不快感や違和感があり、じっとしていられず脚を動かしたくなる。(場合によっては不快感がなくても脚を動かしたくなる。また、時には両手にも同様の症状がみられることがある。)
- その不快感や脚を動かしたくなる欲求は、座ったり横になったりするなど、 安静にしているときに起こる、あるいは悪化する。
- その不快感や脚を動かしたくなる欲求は、歩いたり脚を動かしたりすること(ウォーキングやストレッチ)で改善、あるいは消失する。
- その不快感や脚を動かしたくなる欲求は、日中より夕方や夜間に強くなる傾向がある。
それでは治療です。くすりを使わない方法としては、寝る前に少し歩いてみる、足のストレッチを行う、手足を軽くマッサージしてみる、鉄分の豊富な食事を摂る、夕方以降にカフェイン・アルコール・タバコを控える、などがありますが、それだけで症状を完全に抑えるのは難しいようです。最近ではくすりとの併用が治療の標準になっています。症状に思い当たる方はお気軽に外来にてご相談ください。
( 文・神経内科 則行 英樹 )