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神経内科通信

2012年07月号 「便秘について」

  排便障害、というよりも便秘と言った方がなじみ深いでしょうか。今回のテーマは便秘です。一般的には、3日以上便が出ない状態を便秘と称しています。
 
  私たち医者は患者さんから便秘の薬を頼まれますと、それではどうぞ、と気楽に薬を処方してしまうことが多いのですが、実は便秘にはいろいろな病気が隠れていることがあり、常にそのことを念頭に置いておく必要があります。
 
  便秘には大きく二つの種類がありまして、一つは大腸そのものに何らかの病気がある場合、もう一つは腸そのものに目に見える異常はないけれども、大腸の動き・働きに異常を認める場合です。大腸に異常をきたす、目に見える病気で一番こわいのは何といっても大腸がんでしょう。通常、便に血が混じっている、貧血が進んでいる、といった症状があり、検査で発見されることが多いのですが、これまでに経験したことのない便秘が長く続いている、最近便が細い、といった便の症状がきっかけになって大腸がんが発見されることもあります。(大腸肛門センターくるめ病院の荒木先生によりますと、便秘の相談に来院した40歳以上の男性に検査をしたところ、約1割の方にがんを含む、大腸の変化をきたす病気が見つかったそうです。)他にも大腸が詰まる腸閉塞(へいそく)や大腸の炎症でも便秘は起こりますが、頻度でいえば「見た目に異常がないけれども、大腸の動き・働きが悪くて起こる便秘」が圧倒的に多いようです。
 
  大腸には右下腹部より上に走る上行結腸、上腹部を右から左に横切る横行結腸、左の側腹部をおりる下行結腸があり、続いてS状結腸、直腸となりますが、大腸が怠けてしまい、動きが鈍くなっておこる便秘は上行結腸に便が停滞しやすいといわれ、大腸自体の働きが良好でも、出口(直腸や肛門)の通過機能が低下すれば下行結腸に便がたまります。そのほかにも、排便時の腹圧が弱い、すなわち、いきみが弱い場合も便秘の原因となります。ですから、便秘はその原因によって治療方法が異なるために注意を要するのです。
 
  便秘の治療は、そのタイプに対応した適切な薬を使用するわけですが、日常生活で気をつけるべきこと、それは何といっても食事です。食事時間と食事内容の両方に留意しなければなりません。食事時間の不規則な方は大腸にリズムを作りにくく、その働きを悪くすることが多いようです。また、食事内容としては食物繊維が非常に重要で、厚生労働省によれば、一日20グラム以上の食物繊維が必要とのことでした。
 
  なお、昔から腸が長い人ほど便秘になりやすいと言われていますが、医学的にその事実は証明されていないようです。
 
( 文・神経内科 則行 英樹 )
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