神経内科通信
2014年05月号 「冷え性」
寒い冬も終わって春の陽気に満ちているというのに、手足の冷たい方は多い印象を受けます。というわけで、本日のテーマは「冷え性」です。
手足の冷えの主な原因は血行が悪いことによります。体内の熱を運ぶ役割は血液が担っていますので、血のめぐりが悪い状況では手足は冷たくなります。血管の老化(動脈硬化)や血管の炎症が起これば当然、血のめぐりは悪くなりますが、それらがないのにもかかわらず血のめぐりが悪くなるのは自律神経のバランス不良が大きな原因とされています。
私たちは刻々と変化する環境の中で生きています。特に意識することなくその環境の中で身体が適応できるのは、自律神経がうまく働いてくれているからです。そして、寒くなれば熱を作り、暑くなれば熱を逃がす、これも自律神経の働きによります。自律神経がうまく働かずに、寒いのにもかかわらず手足の血管が縮んでしまえば、血行不良となり手足はより冷たくなるわけですね。問題は夏場です。本来であれば暑いはずなのに、それを寒いと感じてしまう方は暑さの自覚に乏しいため、身体を冷やしたり、水分をとったりしないので、脱水症、熱中症にかかる危険性が高まるのです。
ではどのような対策が必要でしょうか。東京女子医科大学の川嶋先生によりますと、「冷やさない、温める」ことが原則だそうです。食事は体温以上の温かいものをとる、熱の届きにくい下半身は特に保温に気をつかう、夏の冷房に当たりすぎないように気をつける(除湿機能を利用したり、扇風機を上手に使う)、これらは基本中の基本のようです。温めるという意味では入浴が大切だそうで、40℃よりも低いお湯に10分から20分つかり、お湯を出たらなるべき早く身体を乾かして床につくのが良いそうです。40℃以上の温度のお湯は、血管を縮めてしまうそうで、冷え性の方にはとてもお勧めできません。
川嶋先生の説明で興味深い内容を2つご紹介します。身体を温める食材にショウガがあり、この効果については研究でも証明されているそうです。ショウガに熱を加えたり、乾燥させたりすると身体が温まる効果がより強まるらしいので、上手に料理に活かしたいものです。もう一つは「よく噛む」こと。縄文人は一回の食事で約六千回噛んでいたそうです。対して現代人は約五百回ということなのですが、よく噛むことによって脳から脂肪を燃やすように身体に指令が出て、体温を上昇させることが実験で証明されたそうです。
言うまでもなく適度の運動は効果的です。運動により筋肉から熱が生み出されて身体が温まるからです。
( 文・神経内科 則行 英樹 )